上位魔族ベスティアの勘違い日記

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第1話


私はベスティア、「上位魔族」としてこの世に生まれた者だ。

今は魔王の…なんだろう?

上司?をやっている。

まあまあやりがいがあって日々が楽しい。

人生トップクラスと言っても良いだろう。

そんな日々を提供してくれている魔王に

「日記とか付けてないの?無いなら付けてみたら?」

と言われたら日記を書いてみるのもやぶさかでは無い。

恐らくそんなに面白くも無いだろうが、思い出せるだけ書きつけていこう。


私は「冒険者の村」で育てられた。

人間の村だな。

今でこそ魔族と人間は対立することも多いが、その当時はただ種族が異なるだけだという認識だった。


当時から魔族は寿命を全うする者が著しく少なかったため、人間社会で浮かなかったというのもあるだろう。


そんな人間の村で育てられた私だが、どこで生まれたかはわからない。

捨て子だと思われて詳しく調べなかったのだろう。

今考えると私は色々特殊だから、一部の魔族のように親が元々いないのかも知れないな。


捨て子だと思われた私だが、その村はわたしが「生まれた」時に村に帰ってきた人間の英雄がいた。

その英雄がお金を惜しみなく村に投資したことで村の経営に余裕ができていたから、私は山に埋められることは無かった。

私の育ての親はその英雄だ。

人間の名は覚えづらいのだが……アレスだったかな。


私の育ての親として立候補するという性格の良さも兼ね備える、まさに「英雄」と言った男だった。

後から村のおばさんに聞いたところでは彼にとって育児の経験は無かったらしいが、私がまともに育ったということはうまくやったのだろう。


私は周囲の子供と比べて圧倒的に成長が遅かった。

アレス…父は心配しただろう。しかし、父の心配は5歳くらいで終わることとなる。

読者も魔族ならばわかるだろう。「覚醒」したのだ。


ここで角が生えなかったのは良かった。ただの人間と思って育てた者に角が生えたら、父が心臓発作で倒れることになっていただろう。

(角が生えていない魔族を「半人前」と呼ぶことは全く知らなかった。周囲に魔族がいないから当然ではあるが)


ある朝起きたら喋れるようになっていた。

人間は5歳で喋れなかったらおかしいらしい。

5歳も50歳も大して変わらないと思うが、人間はせっかちだからな。


父に話しかけたら泣いて驚いた。

そして、挨拶と食事の「いただきます」と「ごちそうさまでした」を教えられた。

これは今でも感謝している。

初対面での人にはなぜするのかと聞かれるからだ。

会話デッキが少ない私にとってこれは大事だ。


父は「故郷の挨拶でね」と言っていたが、父の故郷は冒険者の村出身のはずだ。

まあ、色々と不思議なところがある人だったから詳しく聞こうとは思わなかった。


人間なのにあまり老けなかったので、行ってみたらまだ生きているのでは無いかと思うことがある。

ああ、喋れただけではなく魔法も使えるようになった。


しかし魔法は才能が無かったようで、10歳の時村にえんしぇんとどらごん?とかいう輩が来たが、それを倒した時以来練習していない。


父も「練習する必要は無い、呼吸と同レベルで自然な魔力回路だ」と言っていたので正しいのだろう。

未だ魔力回路云々は理解していないが…


喋れるようになって魔法が使えるということで、村では10年に1度の天才が現れたと話題になった。

今だから言えるが、種族の差だと思う。


「お父さんの仕事を手伝う」と言ったら誰も反対しなかった。

と言っても、父の仕事はそこまで無かった。

外敵の駆除とお偉いさんの接待…ごふんごふん、交渉だな。

父くらい強ければ全てを殴り飛ばしてもいい気がするが、人間社会はそうも行かないのだろう。


あの時代の人間社会で女の私が交渉を任されるはずもなく、山を散歩してモンスターや熊、猪を駆除する仕事が始まった。

肉が手に入った時は村の皆に感謝されて嬉しかった。

今度近所の村でやってみるか。


モンスターは村の近くだと弱っちいので、村の周囲20kmにいないと探知で確認した後は、山脈のモンスターの軍勢を潰すようになった。

素材は無限に収納できる魔法があるのでそれに入れておいた。

これを5年くらい続けたある日、対戦相手のトカゲが「結界魔法を教えるから見逃してくれ!」と命乞いしてきた。

私としてはどちらでも良かったが、戦っても楽しく無さそうな強さだったので教えてもらった。


教えてもらう時に「これは親族用の結界で〜」とか言っていたが、身内に結界を使うことが多いのだろうか?

モンスターはよくわからないな。

トカゲさんに結界の張り方を教えてもらったので、村に早速張る……前にトカゲさんで試してみる。


「結界」


なんか綺麗な盾が付与された。あ、色々と設定できるんだね。


「重力10倍、魔法無効、暴力無効、反逆追放……」


色々と面白そうだね。外側から守るだけかと思ってたら、内側にも効果をつけられるみたい。


「反逆無効と印付けとくね」


これで間違ってぷちっとしてしまう事がないはずだ。

反逆無効は保険だね。


「ありがとうございます!」


なんかトカゲさんが従順になった気がする?

反逆無効は精神系統なのかも、気をつけよう。

実験に付き合ってくれたトカゲさんを解放して、今度こそ村に帰ろう。


「何を付けようかな?犯罪無効はマストで物理攻撃反射も付けとこう、あとは反逆追放くらいでいいか」


後は困ったら付け足せばいいよね。

このまま思い出すこともなく今までずっと張り続けているが、困ったという報告も無いのでいいだろう。


「ベスちょっと来て〜」


魔王様がお呼びのでここら辺で一旦区切らせてもらおう。

日記も見せに行くとするか。


魔王の感想 : 強すぎてちょっと引くが、面白いから黙っておこう。あと多分お父さん同郷だ。


今日は2話投稿します!

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