第3話
何故か魔王様の機嫌が悪くなっていた。
受付嬢に「かわいい」と言ったり、父に甘えたりしたのがダメだったのだろうか。
一緒にお菓子を食べたら機嫌を直してくれた。魔王様の機嫌はコロコロ変わって面白い。さすまお(流石魔王様今日も可愛い)
父との旅行中私は転移魔法のマーカーを設置する以外にも、色々な事をした。
色々と言っても、大体はモンスターの討伐と新たな技術の習得だ。
モンスターの討伐は特に面白みがなかったが、新しい技術のいくつかは今でも役立っている。
そのうちの一つが錬金術だ。これを習得した事で、私の生活は途端に楽になった。
不老不死に近い体になれたのは考えるべき事が減って楽だったし、ホムンクルスとか言うゴーレムの進化系をゲットできて家事をする必要がなくなった。
錬金術の師匠との出会いは故郷から一番近い大都市、出身国の王都だった。
旅を始めて3時間もしないうちに会ったと思う。
「ここが王都だ。でかいだろ?この人混みに疲れてしまって早々に夢を諦める人もいるくらいだ。とはいえ、俺も人のことは言えないけどな。」
人混み、嫌いかもしれない。
「冒険者ギルドを案内するから、そこを転移場所にしておくといい。あそこは街の結界とはまた別に結界が張られているからな。いざという時でもまあまあ安心だ。」
まあまあなのか。
この街の結界も紙みたいに薄かったから仕方ないのかもしれない。
「ある程度の強者なら破れてしまうが『敵が街に入った』と言うのが分かれば十分なんだ。何かあったら飛んで行くように騎士団はきっちりと鍛えられてるからな。」
そんな活用法もあるんだ。勉強になった。
「同じレベルの魔法師同士の戦いになると、魔法への理解度の差で決着がつく事が多いらしいからな。知っておくのに損はないぞ。」
理解度… 負けちゃうかもしれない。
「ベスは近接戦も強いから殴ったら良いんじゃないか?」
そんなことでいいの?
「騎士ならともかく、冒険者は勝ったら良いからな。負けて死ぬくらいなら、何やっても勝つべきだ。」
今一瞬すごい気持ちの入りようだった。
「父はそんな状況になったことある?」
父くらい強ければそんなことないかも。
「高ランクになっても、初心者のころも、毎日死ぬ気でやってたな。人間の最盛期は短い。死ぬ気でやって、ギリギリSランクに到達できたよ。」
いつか不老不死の魔術を見つけたらかけてあげるね。
「ハッハッハッ、その前に若返りの魔術を見つけてもらわないといけないかもしれないな。」
むう、冗談じゃないのに…
ちなみにここまで殆ど私は声を出していないので、父は1人で話している変人になっている。
「着いたぞ。ここが王都のギルドだ。」
でかいね。最初の街のギルドの5倍はありそうだ。
「人は10倍以上いるからな。広いからって空いてるわけじゃないぞ。」
ギチギチだったら嫌だなあ。そう思いながらドアを開けた。
「あ、そのドアめっちゃ重いのに……」
一旦無かったことにしよう。すーっとドアを閉めて、父に開けてもらう。
「近接職の自信がなくなるよ……」
父はオールラウンダーだけど、転移魔法が一番得意なはずでは?近接戦闘はAランク相当だと教えてもらった気がする。
「そうなんだけどね。最初は騎士志望だったから憧れがあるんだよ。」
この国は身分社会の側面が強いから難しかったのだろう。冒険者は唯一身分社会の外に位置しているが、基本的にランクが物を言う弱肉強食の世界だ。騎士になれなかった者からしたら天職かもしれない。
「ほら、聖騎士とかかっこいいだろう?」
父には申し訳ないが、魔族の私に12年間触れてきているので暗黒騎士の素質が伸びてきている。人間の国では騎士になるのは難しいかもしれない。
「アレスさん、何独り言を言っているんですか?」
おお、かわいい受付嬢が話しかけてきた。父にだけど。
「リースさん、お久しぶりです。この子は私の娘のベスティアです。今日はこの子の転移魔法先に登録しようと思ってね。」
ふむふむ、リースさんか。
「こんにちは、ベスティアです。お姉さんかわいいですね。ベスと呼んでください。」
初対面で失礼かもしれないが、感情を伝えておかないと後悔すると父に教えられたからな。脳内リースさんは許してくれると言っている。
「まあ嬉しい。よろしくね、ベスちゃん。」
対応が天使ではないか?いや天使だったら敵対種族になるが、あくまでも可愛らしさを表現するものであってーーーーーー
「ベスちゃーん?固まっちゃった」
「くっ、初日からリースさんから愛称呼びなど羨ましい!」
「いや君の名前愛称にできるほど長くないし」
「それでも!やはり!羨ましい‼︎」
「はっ、ここはどこ?」
意識が少し飛んでいたようだ。リースさん恐るべし。
その後、リースさんとパスを繋いで会話できるようになった。
「ここを転移場所に設定するのは問題ありませんが、2つ注意点があります。」
なんだろう
「一つ目は、事故ってもギルドは責任を取りません。二つ目は、受付前とドア前には転移しないでください。」
当たり前のマナーで良かった。守れないルールは意味がないからね。
「昔はもっと多かったらしいですけど、転移魔法が使える人が減り、いつしか覚えている人がいなくなった為再設定されたらしいです。」
紙に書いて保存とかしないんだね。
「戦争で全て燃えるor紛失しました。」
ギルドがあるような街中で戦争⁉︎人間は一度始まると止まれなくなるのかもしれない。これも覚えておこう。
「今日の宿は決まっていますか?もし決まってなければ案内しますよ。」
「お願いします。お金は余裕があるので、快適な場所だと助かります。」
父は長年冒険者だったこともあって、旅行中の交渉やらは父に任せることにした。お金は使いきれないくらいあるし、良いだろう。
「わかりました。夜の鐘が鳴る前に戻ってきてもらえたら、調べ終わってると思います。」
仕事を増やしてしまった?申し訳ない。
「宿から紹介料がもらえるので気にしなくていいですよ。さあ、アレスさんに王都を案内してもらってください!」
王都の観光か、あの人混みに戻るのか…
魔王の感想 : リースさんと私って見た目が似てるのかな?ベスの好みってことは似てるんだろうなあ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます