第5話

十二月二十七日午前九時四十八分。

入口が開くのを確認。

推定二十代後半。No.Q687

店内に入った瞬間から全体を舐め回すように見ている。

店前で外観の写真を撮っている様子も観測済み。


「いらっしゃいませ」

こちらの全ての動きに反応するような怪しみを含んだ目線から不安と緊張、恐怖を推測。


提供開始から2秒スマホを取り出すのを確認。

「写真、とっても大丈夫ですか?」

「構いません」


しっかりと味を確かめるような遅い咀嚼。

別の品目に手をつける前に水を飲み味覚を研いでいるよう。

「あの、これって、どこの野菜ですか?」

「私には朝食の提供がプログラミングされており食材の調達は行っておりませんので何もわかりません」

「あ、そうですか。なんか、すみません」

スマホで文字を打ち込む指の動きから“人間未満”と打ち込んだことを推測。


提供開始から二十二分

No.Q687の完食を観測。

「ごちそうさまでした」


No.Q687の退店を観測。

No.Q687は終始疑念の目をこちらに向けていた。




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