第7話 悩める魔王城

「命を狙われている? どういうことですか?」

「簡単なことだよ。――玉座争いさ。人間にだってあるだろ?」


 玉座争い……?

 え、魔王にもそんなのあるのか?

 

「魔王様を殺してその座に取って代わりたいのさ。次の魔王になりたい各地の魔将軍たちが配下の魔物を従えて、常に魔王様の命を狙っている」

「えっ……。魔物ってみんな魔王の手下なのかと思ってたッス」 


 俺もそう思ってた……

 あんまり知能のない魔物は分からないけど、ある程度の知能があったらみんな魔王様に忠誠を誓っているのかと思ってた。


「あぁ。この世界でも、人間はみんなそう思ってるよ。魔物はすべて魔王様の部下だと思い込んでる」


 ……え?


「というか、各地の魔物が魔王様の手下のふりをして悪さをしているからね」

「手下のふり……? なんでですか?」


 ゾロは忌々しげな表情で目を伏せた。

 

「自分たちでは殺せない最強の魔王様を、人間の勇者に殺してほしいからだよ。あいつら手を組んで、魔王様が諸悪の根元に見えるよう仕組みやがった」

「えっ」

「自ら魔王様に挑むと今日のデネスみたいにすぐ殺されるからな。デネスは直情的なバカだから自分で襲撃しに来たけど……他の魔将軍は狡猾なヤツが多いから」

「そんな……」


 まじかよ……

 というか人間、踊らされすぎだろ。


「魔王様は、ヒトを滅ぼそうとか世界を制服しようなんて考えは持っていらっしゃらないんだ。魔王城に戦いを挑んでくる人間やつらだって、殺したくて殺してるわけじゃない。現にお前らみたいな異世界のヒトだって、こうやって魔王城の仕事に採用してるだろ。あんまり種族がどうとかこだわらないんだよ、あのお方は」


 なんだって……

 それが本当ならとんでもない話だ。


 その誤解のせいで、魔将軍とその配下どころか、人間も含めた世界中が魔王様の敵になっているということか。

 相手が魔王でもさすがに同情してしまう話だ。


 魔王様が人間を害すつもりがないというのであれば、人間側の誤解を解く方法が何かあればいいのに。


 魔王城に来る冒険者だって、このままでは無駄に死んでいくだけだ。

 何かいい方法は、ないのだろうか。

 

 同じ人間の俺が、城に来る冒険者を説得してみるか?

 ……いや、それじゃ俺が魔王に操られていると思われて怪しまれるだけだ。きっと誰も信じない。下手すると殺されるかも。


 うーん、やばいと思ったら死んだフリで乗り切るか? 死体が操られてました~みたいな。

 いや、多分それでも危険だな……


「……あ」

「ん、どうした」

「人間側の誤解を解く方法……あるかもしれません」

「どういうこと?」


「魔王様に、んです」 

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