第2話 都市国家ノックスアエウム
「それにしても、いつまで経っても慣れないな、14時って」
「時間のこと?まあそうね、1日が24時間っていうのも何でなのかしらね」
「なんか昔からずっとそうだったらしい、人類がここにくる前は明るい時間帯から暗い時間を24時間に分けてその区切りを1日としんだとか・・・よく分からんけど」
エレベーターに乗りながら再度人工的な光に包まれた街を見下ろす。この街で生まれ育つ教育課程で、何度もこの街のものは全て人工的なもので、自然のものはもう一つもないと言われたが、人工的だと言われても僕にはピンと来ない。わざわざいう必要があるのだろうか。地上の世界への憧れを駆り立てるだけではないか、と子供ながらに思った記憶がある。
この街に生きる者は5歳から基本的な教育を受けることになり、その過程でこの街の歴史を学ぶことになる。歴史書によるとこの地下都市が出来たのはおよそ150年ほど前のことで、それ以前、人類は地上で豊かに暮らしていた。大陸にはいくつもの国があり、国々はそれぞれの特色を活かし、争いの無い友好関係を保っていたという。
ところが突如大陸全体が未曾有の天災に襲われ、地上の国々は次々と滅んでいった。神の怒りが地上に届いたと言われるほどに甚大な被害が出たことから「アースアクト」と呼ばれている。しかし幸運なことにアースアクトは一度に全ての国に襲いかかることはなく、数年に一度というペースで各地に起こったため、猶予のあった生き残りたちが時間をかけて避難場所として確保できたのが地下シェルター、この地下都市の前身だった。
それからおよそ150年で地上にいた時と大差ないほどの都市国家を築くに至った。国名をノックスアエウムと名付け、先人たちが復興に心血を注いできた。避難してきた当初はただの地下シェルターだったが、今では当時換算にして、地上の国3つ分ほどの国土面積を誇る一大国家にまで成長している。国は大きく3つの都市に分かれている。
国の南東に位置する貿易都市アクアベルタ。人口は二番目に多い。ここは滅びる前の地上の国々の国立公園や自然保護区などの環境を参考に、人工的に作った農場での農業や人工海水を使った水産業など、国のあらゆる生活基盤に関わる産業を担っている。街の至るこ場所に人工水路がひかれ、街の景観を美しく保っている。また、この都市で作られたものは国の物流網を通り、一部を除く全ての都市へ配分されている。地下都市には海は無いため、移動手段は車や電車が主であり、近年、航空路にも着手し始め、現在整備中である。この物流網の整備、管理を取り仕切ってるのもここアクアベルタであり街の中央部には貿易セントラルビルが立ち並ぶ。
続いて、国の南西に位置している工業都市ネオメタリウス。人口は一番少ないが、ここでは武器や機械製品など、あらゆるモノづくりがなされている。効率的に基幹産業の発展を推し進めた結果、動力の大きな建物が多く建設され、休むことなく稼働させている。また街のあらゆるところに液晶モニターが設置され、中央都市と提携して国中の情報が発信されている。さらに、国でも随一のサイバー都市として栄えており、いわゆる電子機器や生活用家電、国のインフラ設備の設計から構築まで、あらゆる先端技術が集約されている。そしてここで作られたものも貿易都市アクアベルタの施した物流網によって、一部を除く国中へ分配される。中央には壁一面に液晶画面を取り付け、ひときわ眩く電子情報を垂れ流しているセントラルウォールが鎮座している。
そして最後に中央都市フェニスガルド。ノックスアエウムはこの街から始まった。人口は一番多く、国で一番大きな発電所を構えている。国中のインフラ設備の優先権限を有し、国の法治システムもここで作られてきた。また、軍事力も国最大であり、両都市を相手にしても拮抗できるほどの力を有している。中央都市ということもあり、居住区には巨大な商業施設も構えており、大きな盛り上がりを見せている。この都市が流行の最先端でもあり、メディア事業の中核を担っているため、国中に発信できる電波からさまざまな媒体で日々情報を発信している。この3都市がそれぞれの役割を担うことでお互いを補い、均衡を保っている。
Daybreak 言葉(ことは) @saemon243
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