第2話
朝の校庭で、放送室からゆっくりした音楽が聞こえた。
日直で早めに登校していたにゅーむは、
そこで、あれ、と思った。
放送の時間は、まだずっと先のはずだ。
それにいつも流れている曲調と違い、
静かで、やさしい音色だった。
にゅーむは足を止めて、
しばらくその音に耳をすませた。
校庭の朝が、少しだけ鮮やかになった気がした。
気がつくと、生徒がちらほら登校してくる時間帯になっていた。
いくら耳を澄ませても、
あのきれいな音色は、もう聞こえない。
代わりに聞こえてきたのは、
校門をくぐる足音や、
「おはよー」という、いつもの声。
それとともに、にゅーむは自分が日直の仕事のために早く登校したのだということを思い出した。時計を見ると、もうHRまであまり時間がない。
あのきれいな音色の余韻に浸るまもなくにゅーむは朝の準備に追われ、あの音のことはどんどん記憶から消えていったのだった。
しかし、そのことを思い出させたのは、
友だちとの会話の
「放送室」というワードだった。
朝の校庭と、
あのやさしい音色が、
ふっと胸によみがえる。
友達の話は放送室ってあまり使われてないから幽霊とか出そうだよね、という他愛もない話だったが、
それでも友達の話が終わったあと、にゅーむはおもわず友達に聞いていた。
「今朝さ、放送室から音楽が流れてた気がするんだけど」
そう言うと、友だちは首をかしげて、
「え、今日放送室の前を通ったけど誰も使ってなかったはずだよ。」と笑った。
気のせいだったのかな。
不思議に思いながらも、
胸の奥に、小さなあたたかさが残っていた。
次の朝。
にゅーむは、その音が気になって、
少し早く家を出た。
人の少ない校庭は、昨日と同じようにひんやりして静かだった。
校舎に近づくと、
放送室の窓が、少しだけ開いているのが見えた。
音楽は聞こえない。
でも、そこに昨日の余韻が残っている気がした。
にゅーむは、放送室の前までは行かず、
校庭のベンチに腰を下ろした。
しばらくして、
校舎のどこかから、
ほんの少しだけ、あの音色が流れてきた。
いまだどこから流れてきているのかわからない音。
でも、にゅーむは「ま、いっか」と思った。
ベンチに座って音を聞いている間に、「この音がここに存在してるだけでいい。」と思うようになってきたのだった。
それに、探してしまうことでこの音が消えてしますような気もしたからだ。
やがて音楽は、朝の風に溶けるように消え、
代わりに、友だちの声や足音が広がっていく。
にゅーむは立ち上がり、
スキップしながらいつもの教室へ向かった。
明日も早く来よう。
にゅーむのつぶやきは、雲一つない真っ青な空に溶けていった。
心があたたかくなる3分物語 @real-name
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