心があたたかくなる3分物語
@real-name
第1話
公園のベンチに、片方だけの靴と小さなカバンがあった。
どちらも長年大切に使われていそうな、年季の入ったものだ。
その公園に遊びに来ていたにゅーむは、
そのカバンと靴から目が離せなくなった。
風が吹くと、カバンの中の小さな鈴が
チリン、と鳴って、
まるで誰かを呼んでいるみたいだった。
あまりに異様な存在感を放っているため、にゅーむは思わず話しかけてしまった。
「……誰か、いるの?」
りん。
鈴の音とともに、カバンが少し動いた気がした。
驚いて一歩下がると、
カバンは慌てたみたいに元の位置に戻り、
今度は小さく二回、鈴を鳴らした。
そして、蓋が少しだけ開いた。
中から出てきたのは、一枚の紙。
丸い字で、こう書いてあった。
「まってたよ」
にゅーむは、その文字に見覚えがあった。
それは昔、いっしょに遊んでいた友だちが、
ノートの端や手紙によく書いていた字だった。
その子は事故で、三年前に亡くなったはずだった。
でも、こわさはなかった。
にゅーむは心の中で、そっと名前を呼んでみた。
返事はない。
それでも、また蓋が少し開き、
一枚の紙がすべり出てきた。
「ちゃんと、げんき?」
にじんだ文字の下には、
昔よく描いてくれた小さな星。
「うん、元気だよ」
にゅーむは心の中で、そう答えた。
もうすぐ五時のチャイムが鳴る。
帰る時間だ。
チャイムが鳴る直前、
カバンはゆっくり閉じて、
片方だった靴も、いつのまにかきちんと揃っていた。
にゅーむは何も拾わず、
何も持ち帰らず、
ただ小さく手を振った。
鈴の音はもうしなかったけれど、
夕方の空は、少しだけ明るかった。
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他にもいろいろなあたたかくなる短編を書いていきます。
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