天使失格(3)

 横たえられている女性は、純白のドレスを着て後ろ手に縛られ、諦めたように力を抜いていた。


 王が、踊るような足取りで女性のもとに向かう。


「妃よ、気分はどうだ?」


 妃は、力のない目で王を見つめた。


「感謝するが良い。記念すべき10,000人目に選ばれたということを!」


 王は狂ったように笑った。


「· · · · · ·止めろ!」


 刀が、落ちて行く。天使には、何もできない。


「俺の前で人を殺すな· · · · · ·!」


 王は、満面の笑顔になった。人の苦しみを、楽しんでいる。


 天使は、生まれてはじめて怒りを感じた。


 そして、祈った。



 ———すると。


 刀が、止まった。


 天使は、怒りにまかせて兵の刀を取り、王の腹に突き立てた。———何度も、何度も。


 王は、腹を抱え、最後まで笑っていた。


 妃は、夫が死にゆく様子を空ろな瞳で見ていた。

 天使は、ふと我に取って己の手のひらを見た。· · · · · ·血に濡れた、手。


「何ということだ。· · · · · ·人を、殺してしまった」


 天使は呟いて、天に昇った。



 天では、神が待っていた。


「お前には罪を与えねばならぬ。残念だ」


 天使は、神の前にひれ伏した。


「私は、どうすればいいのでしょうか· · · · · ·」


「下界に堕ちろ、そして2度と、戻って来るな。

· · · · · ·お前はもう、天使ではない」


* * *


 羽をもがれた大使は、下界に堕ちた。


 ———それでもなお、

 彼は不死身だった———。

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