天使失格(2)

王城に着くなり、天使は王の前に引きずり出された。


「お前は天使か!」

 ニヤリ、と王が笑う。


「追って褒賞を与える。今は去れ」

「承知致しました。失礼します」


 去っていく傭兵の取りは、軽かった。


「さて」


 人がいなくなった広場に、王の声が響く。


「お前には、何をしてもらおうか」


 その王は、

『殺人9999件』

『誘拐命令127件』

など、


 自分では手を下さずに罪を犯していた。


「私には貴方の願いをかる力はありません」

 欲望にまみれた瞳を見てめて、天使は言った。


「戯けたことを言うな!お前は私は従っていればいいんだ!」


 喚く王に何も返さず、天使はうつむく。


「もういい! ———衛兵!」

「はっ!」


 ニタリ、と笑って。


「この無礼者を、地下牢へ。尋問せよ!」


 血に飢えた顔が、輝く。


「おおせのままに」


* * *


 それから数日が経った頃。

 天使は、時間を知ることができななった。部屋には窓がなく、常に薄暗い。


 かろうじて兵士の交代で時の経過を知ることができた。


 灰色の石壁に鎖でつながれ、殴られ、刃物で傷つけられ、歯を折られた。


 それでも、天使は意識を失わなかった。———いくら傷つけられても、しばらくすると回復する。それが、兵士の人を傷つけたいという欲望に油を注いだ。不死身の相手なら、いくらでも傷つけていいだろうと。


 いたぶられている天使のもとに、

「来い。陛下がお待ちだ」


 王からの使者が来た。


 天使は後ほ手に縛られ、また同じ広場に連行された。


 正面の玉座には、王がふんぞり返っていた。


「どうだ。私の願いを叶える気にはなったか」


 そうであると信じ切っているような声。


「いいえ」

 顔を上げずに、天使は言う。


「何故だ!何故、私の言う通りにしない!」


「昨日言った通りです」


 落ち着いた声音が王の劣等感を刺激する。


「そうか。そんなに嫌なら」


 諦めよう、とはならなかった。


「カイガル」


 いつの間にか背後に控えていた男に、王が視線を向ける。


「承知致しました。· · · · · ·おい!」


 衛兵が天使の体を起こし、歩かせる。


 王が、ニヤリと笑っていた。


 そこに、1人の兵がやって来る。


「準備できました」


 王が顎をしゃくると、奥に引かれていた布が、上がった。


 そこにあったのは、断頭台だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る