いつか貴方に、夢を見せられるように。

咲山けんたろー

短編

『貴方に夢がありますか?』


 おそらく、人の数だけ答えがあると思う。

 堂々あると言える人、ない人、あったけど諦めた人、別の形で夢を叶えた人――。



 そんな、十人十色の世界で――




 私は、漫画家になりたいと思った。





 昔から、私はオリジナルの物語を書くのが好きだった。


 両親が定期的に買ってきてくれた自由帳で、見開きの半分を文章で書いて、もう半分をイラストで埋めていた。




「けんたろー!! この女の子だあれ?」



 当時仲の良かった友人に、よく言われた言葉がこれである。


 恐らく絵を書いてる人は、この気持ちがよくわかるだろう。


 完全にオリジナルキャラクターなため、誰もなにもないと。


 でも、自分の考えたキャラの名前を言うのも恥ずかしかったし、かと言って嘘をつくわけにもいかなかったので、いつも苦笑いで誤魔化していたのを覚えている。



 20冊以上自由帳に物語を描き殴り、ついに母親にも呆れられたほどだ。


 そんなに高くない値段なのに、気がついたら自由帳も定期的に買ってもらえなくなったのだ。


 こっそり、父親が私にプレゼントしてくれたのを覚えている。



 この出来事があったから、今もなお、物語を書き続けているのかもしれない。



 私は、人より共感性が高いと思う。


 音楽を聞いて涙を流したことはあるだろうか。私は、何度もある。しかし、あんまり多くないようで、家族に話すと相当驚かれた。


 恋愛ソング以外にもバトルソングや、落ち着く音楽など、聞くジャンルは様々で、曲の雰囲気によって、自分が色々なところへ旅に出れるのだ。


 そのため、創作をするうえで音楽はかせない。



 意外にも、本気で漫画家になりたいと思ったのは最近である。時間が大いにある今、少年ジャンプ作品を数多く見た。




 ジャンプは私に力をくれる。才能がなくても、なりたいと思うことや、強くなりたいと思えたことで、いつの間にか、心強い仲間に恵まれて、夢に向かって歩んでいける。


 漫画家になることは、想像以上に厳しい。実際、不規則な生活で、短命が多いことで有名だし、デビューしても打ち切りもざらで、編集者に何度もダメだしされて――――。



 でも、悔しいほどに、ジャンプ作品を見ると、自分の作品がいつか世に知れ渡って、元気づけてほしいと思ってしまうのだ。


 漫画賞応募経験もあるが、1回も賞を取ったことがない。だめだと分かっていても、いざ、それが現実になると胸が苦しくて、こんなに頑張って書いた漫画も無意味に感じてしまう。


 綺麗な一面しか見えていないのもわかっている。なれるまで時間がかかるのも。想像よりずっと、ずっと大変なのもわかっている。



 でも、やっぱり、泣きたいほどになりたくて、自分を誰かに勇気を与える側になりたい。



 そうやって、人は更に成長できるものだと思う。



 始まりは、誰かになりたいという思いで、そこから真似をしながら、個性を見つけ出して、自分にしか出せない強さを発揮する。


 そして、またそれに憧れた人が現れて、さらに強くなって、夢を超えていく――。



 だから、いつか私も、誰かに憧れを持たれるような人になりたい。



 作品だけじゃなくて、私自身の心も強くなって、いつか貴方に、手を差し伸べられるような、そんな存在になる。



 辛くても、憧れは止められないから。

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いつか貴方に、夢を見せられるように。 咲山けんたろー @lovenovel_kenkenta

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