4. 研究報告書(Research Report)

【TRC公用書式:TR-Research-04】


有害遺物研究報告書


FID:TR-0144-RR-01

発行日:20XX年10月20日

主任研究員:職員コード:RS-102(有害遺物研究所 第四研究室)

管理番号:TR No.0144(通称:赤いメモ用紙)



1. 遺物の概要


【外観的特徴】


縦125mm、横75mm。


計50枚綴りのメモ帳。


紙体は未知の有機繊維を含んだ鮮紅色で、質感は人間の皮膚に極めて近い。


【構成物質】


主成分はセルロースだが、微量のヒトゲノム(特定不能)および、未知の抗凝固剤成分が検出された。


質量は常に一定だが、後述の「消費」直後のみ数ミリグラムの増加が観測される。



2. 呪異特性(Anomalous Properties)


【活性化条件(トリガー)】


対象を所有し、その紙面に「ペン」または「尖ったもの」で筆記を行うこと。


筆記の内容が具体的(時間、場所、行動)であるほど、活性化の速度が増す。


【事象の性質】


「因果の強制」および「存在の記述置換」


筆記された内容は、物理法則を無視して必ず実行される。


しかし、実行の代償として筆記者の体組織(血液、肉、骨)が「インク」として消費され、紙面へと吸収される。


【影響範囲】


直接的な接触者に限られるが、紙面に名前を記載された第三者にも被害が波及する可能性がある(※現在、実験凍結中)



3. 接触実験記録


【実験体】


被験者D-9022(40代男性、死刑囚)


【経過観察】


筆記開始: 被験者に「1分後に水を飲む」と記載させた。直後、被験者は拒絶反応を示したが、身体が強制的に駆動し、用意された水を飲み干した。


変異: 筆記に使用したボールペンのインクが消失し、代わりに被験者の毛細血管から直接血液が吸引され、文字が赤く染まった。


最終段階: 筆記内容を「自身の解放」と指示。被験者が書き終えた瞬間、被験者の全身が急速に平面化。叫び声と共に、肉体、衣類、意識の全てが「赤いインク」へと変換され、TR-0144の次ページへと吸い込まれた。


結果: 実験室にはTR-0144のみが残り、被験者の存在は物理的・概念的に完全に消失。メモの次ページには、被験者の全人生が詳細な年表として自動記述されていた。



4. 耐性・脆弱性調査


【破壊耐性】


摂氏2,000度の加熱、ダイヤモンドカッターによる切断を試みたが、傷一つ付かず。


【抑制手段】


鉛による遮蔽は精神干渉を80%抑制可能。


また「何も書かない」ことが唯一の回避策だが、所有者は数日以内に強烈な「書きたい」という衝動(認識汚染)に支配されるため、完全な自制は不可能と断定。



5. 研究所判定


【確定危険度】


ランクB(※ただし、大規模な記述が行われた場合はランクAへの昇格を検討)


【汚染持続性】


極めて高い。


一度「所有」と認識されると、遺物を破棄しても所有者の元へ回帰する。


【特記事項】


本遺物は、書き込まれた情報を「食べる」ことで成長している可能性がある。


現在、年表が記述されたページを剥がそうとした研究員1名が、指先を紙で切り、そのまま右腕全体を「吸い取られる」という事故が発生。


当該ページは現在、完全に紙面と一体化している。



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承認: 研究所長 [署名/印]

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