3. 調査及び回収報告書(Field Report)

【TRC公用書式:TR-Field-03】


有害遺物調査及び回収報告書

FID:TR-0144-FR-01

作成日:20XX年10月15日

作成者:職員コード:7A-04(第七部隊 指揮官)

所属:有害遺物回収部隊 第七部隊



1. 事案概要


事案発生場所: 東京都■■区 ■■■■アパート 203号室

回収日時: 20XX年10月15日 04時39分

暫定TR No.: TR-0144

暫定危険度: ランクB



2. 現場状況報告


【物理的環境】


室内温度は15.2℃で一定。


生活空間全体が未知の液体(外観は血液に酷似)により完全に被覆されていた。


液体からは高濃度の金属臭および、紙が焼けるような異臭が検出された。


【異常現象】


液体の「重力逆行現象」を確認。


床面から天井へ向かって液体が移動する様子が観測された。


また、回収時には特定の周波数を伴わない「書け」という指向性を持った幻聴が隊員1名に発生した。


3. 被害者状況


【確認された遺体】


0躯(※行方不明として処理)


【遺体の損壊状況】


現場に飛散した血液推定量は約20リットルを超えており、これは成人男性3名分以上に相当する。


被害者(佐藤 健一)の生存可能性は皆無と判断。


血痕の中に骨、内臓、衣服の破片すら残されていない点は極めて特異である。


【生存者/目撃者】


隣室住人1名。


情報統制機構により「近隣での変死事件に伴うショック」というカバーストーリーを適用し、クラスA記憶処理を施行。



4. 遺物回収記録


【初期発見状態】


散乱した家具の中で、ダイニングテーブル上のみ血痕が一切付着しておらず、その中心にTR-0144が鎮座していた。


【回収手法】


標準隔離プロトコルに基づき、鉛製遮蔽コンテナ(TR-C-09)への封入を実施。


コンテナ密閉と同時に室内の異常現象(重力逆行、赤色光)は消失した。


【特記事項】


回収作業にあたった隊員C(7C-03)が重度の精神汚染(認知改変)を呈した。


現在、医療班による隔離観察中。


「自分の指がペンに見える」との強迫観念を執拗に訴えている。



5. 添付資料


[x] ボディカム映像ログ(FID-0144-LOG-02)


[x] 現場残留血液の組成分析依頼書


[x] 被害者スマートフォン・メモアプリの書き出しデータ



6. 現場指揮官の見解


本遺物は単なる物理的被害をもたらすだけでなく、所有者のを紙面上の情報へと置換・吸収している疑いがある。


現場に遺体や遺留品が全く残されていないのは、物理的な損壊ではなくが行われた結果ではないか。


早急に研究所での「記述試験」を推奨する。



―――――――――――――――――――――――――――――――――

承認: [ Octopus-4 承認済 ] 秘匿区分: 閲覧レベル 2

―――――――――――――――――――――――――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る