2. 回収状況(Bodycam Footage Log)

2. 回収状況(Bodycam Footage Log)


FID:TR-0144-LOG-02

事案呼称:「赤いメモ用紙」

記録媒体:有害遺物回収部隊 第七部隊 隊員A(コード:7A-04)ボディカム映像ログ

作戦日時:20XX年10月15日 04:30 - 05:05

作戦場所:佐藤 健一 氏(仮名)宅アパート [住所秘匿]


【映像ログ:抜粋】


[04:30] アパート2階廊下。第七部隊3名(隊員A、B、C)が突入準備。


隊員A(7A-04)「第七部隊、A、B、C。目標アパート203号室。情報統制機構より、周辺住民への簡易記憶処理完了の報告あり。現在、現場周辺に民間人の存在なし」


隊員B(7B-01)「隊長、203号室ドア、損傷なし。しかし、内部から微弱な金属臭と……焦げ付いたような異臭を確認。通常の事件現場とは異なる」


隊員C(7C-03)「警報器の反応はなし。ただし、ドアノブから微弱な電磁波を感知。非接触センサーに異常なし」



[04:32] 隊員Bがマスターキーでドアを解錠。内部は真っ暗。


隊員A「ライトオン。突入。警戒を怠るな」


(※ライトが点灯。室内は酷く荒れている。ダイニングテーブルが倒れ、椅子が散乱しているのが映る)



[04:33] リビングルームへ進入。床全体が、まるで鮮血でペンキを塗ったかのように、真っ赤に染まっている。


隊員C「……これは……。大量の血液反応。しかし、粘度が異常。通常の血液よりも粘性が高い」


隊員B「被害者の体組織は? 見当たらない。死体は?」


隊員A「情報統制機構からの報告通り、遺体は確認できず。血痕の量からして、生きてはいないだろう」



[04:34] ボディカムの映像が、一瞬だけ強く歪む。 ノイズが走り、音声が途切れる。


隊員B「……ったく、何だ、このノイズは!?」


隊員A「機材の異常か? 報告しろ」


隊員C「いいえ、こちらに異常なし。……隊長、天井を見てください。血痕が……逆流している?」


(※映像が天井を捉える。赤い液体が、重力に逆らうかのように、床から天井へ向かってゆっくりと這い上がっているように見える)



[04:35] ダイニングテーブルの上に設置されたスポットライトが、赤く点滅し始める。


隊員A「何だ、電源は落としたはずだ!」


(※赤い光が部屋全体を染め上げる。それに呼応するかのように、床の赤い液体が微かに波打つ)


隊員B「(怯えた声で)隊長、あれ……。テーブルの上、赤い紙束が……」


(※映像がテーブル上を捉える。そこに、真新しい、真っ赤なメモ用紙が一束、静かに置かれている)



[04:36] 隊員A、保護手袋を装着し、メモ用紙に接近。


隊員A「対象、確認。TR-0144……見たところ、何ら変哲のないメモ用紙だ。だが、この部屋全体を覆う血痕の量と、この紙……」


(※隊員Aがメモ用紙に手を伸ばす瞬間、部屋全体の赤い液体が激しく泡立ち、メモ用紙から微かにが聞こえる)



[04:37] 隊員Cが突然、頭を抱えてしゃがみ込む。


隊員C「なんだこれ…頭が……誰かの声が、聞こえる……『書け、書け、書け』って……!」


隊員A「隊員C、離れろ! 対象から距離を取れ!」


隊員B「(無線で)本部、第七部隊。隊員Cが精神汚染の兆候。対象の周囲に、未知の精神干渉を確認。ランクB以上の可能性あり」



[04:39] 隊員A、特製鉛製ケースを取り出し、メモ用紙を慎重に収容。ケースを閉じた途端、部屋の赤い光が消え、天井を這っていた赤い液体も動きを止める。


隊員A「収容完了。隊員Cを速やかに医療班へ。現場からの全回収物を指定コンテナへ移送。これ以上の調査は研究所に引き継ぐ」



[04:45] 隊員A、B、Cが現場を離脱。隊員Cは意識が朦朧としており、隊員Bに肩を支えられている。


(※映像が最後に203号室のドアを映す。ドアが閉まる寸前、一瞬だけ、部屋の床の赤い液体が再びゆっくりと蠢き始めたように見えたが、次の瞬間には映像が途切れる)

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