第10話 迷いの分岐
罠の迷宮を抜けた先、深層はさらに暗く、空気はひんやりと冷たい。石造りの通路は曲がりくねり、微かな水音が反響している。キースと猫型モンスターたちは、互いに距離を保ちながら慎重に進んだ。
「……ここから先は、ますます入り組んでるな。」
キースは小さく呟き、剣を握り直す。
ミィ、黒猫、シャオも警戒を強め、耳をピクピク動かして周囲を探っている。
通路の奥で、突然の分岐点に出た。左の通路は薄暗く、冷気が漂う。右の通路は少し広く、かすかな光が差し込んでいる。
「……どっちに行くべきか。」
キースは立ち止まり、猫たちの様子をうかがう。ミィは左に体を向け、黒猫は右を示すように尾を立てる。シャオは両方を見比べ、軽く鳴いた。
「……まさか、直感に頼るしかないのか。」
迷いながらも、キースは深呼吸する。分岐の先には新たな罠やモンスターが待っている。ここでの選択ミスは命取りになりかねない。
「……よし、ミィ、黒猫、シャオ、俺の後に続いてくれ。」
三匹の猫は小さく鳴き、キースに従う姿勢を示す。
まず左の通路を慎重に進むことに決めた。冷たい空気が肌を刺す中、猫たちが先導し、罠や落とし穴を察知して道を示す。微細な床の凹凸や壁の反射を敏感に察知する三匹の動きは、まるで完璧なナビゲーションだ。
しばらく進むと、通路の中央に小さな広間が現れた。壁には古代文字と魔法陣が描かれ、かすかに光を放っている。中心には、黒くうごめく影――巨大な蜘蛛型モンスターが待ち構えていた。
「……またか!」
キースは剣を構え、三匹の猫型モンスターを前に出す。
【まねきねこ、発動】
【対象:ミィ、黒猫、シャオ】
猫たちは一斉に前に出て、蜘蛛型モンスターの動きを封じる。ミィが左、黒猫が右、シャオが後ろから攻撃のタイミングを誘導する。モンスターは混乱し、攻撃のリズムを狂わされる。
「……よし、隙だ!」
キースはその瞬間を見逃さず、剣を振って攻撃を加える。蜘蛛型モンスターは後退し、再び動きを封じられた。
戦いの最中、猫たちは互いに連携を取り合い、新たな攻撃パターンを編み出す。信頼関係と絆があるからこそ、最弱のキースでも強敵を相手に戦えるのだ。
戦闘後、広間の奥で休息を取る三匹とキース。
「……やっぱり、迷いながらも進むしかないんだな。」
キースは剣を背に掛け、猫たちの頭を撫でる。小さな仲間たちと共に進む道は、確かに厳しい。しかし、信頼と連携があれば、どんな分岐も乗り越えられる。
通路の奥には、さらに複雑な分岐が待っている。迷いは続くが、キースの心は揺れなかった。
「……行くぞ、ミィ、黒猫、シャオ。」
小さく鳴く猫たちに応え、キースは再び深層の闇へと足を踏み出した。
迷いの分岐――それは試練であり、選択の連続。しかし、最底辺探索者と猫たちの絆が、暗闇を切り裂く光となるのだった。
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