3−2

街を歩いていると、少し変わった外見のサキュバスに出会う時がある。

猫、牛、狐のような耳や尻尾を持つ個体。ときには、スライムのような体をしていたり、体から植物が生えていたり、何かの擬人化のような存在までいた。


でもラブは驚かない。当たり前のように彼女達を見ている。

「彼女達もサキュバスだよー。一応”亜種”なんて区別のされ方もあるけどね。」


「前にサキュバスの誕生について話したと思うけど、生成に使われる魔力の傾向で姿が変わるっぽいんだよねー。」


家に帰ると、彼女は記憶書を見せてくれた。


・スライム型

体が半透明の、粘性の高い液体のような性質。変形自由。コアが弱点。

「変身、合体…けっこう多芸な種だよー。」

「人間形態を維持するのは疲れないのだろうか?」


・ハーピー型

翼と鳥の脚が生えた、飛行能力の高い種。ヤラシ区では運搬業に携わることが多い。

「上空で求愛飛行して、気に入った相手を空中でさらうのがこの子達のやり方!」

「獲物目線からしたら超迷惑だな。」


・ビースト型

獣の要素を持つ種。それぞれの獣の身体的特徴を持つものがおおい。

「どれだけケモノっぽいかもまちまちだよ!」

「人間にはその辺の好みが分かれそう。」


・マーメイド型

上半身は人、下半身は魚のよう。陸でも生きられるが、水中の方が好み。

「おびき寄せるスタイルで、受け身な子が多い印象かな。」

「流石に街では見かけたことはないな。」


・アラクネ型

上半身は人、下半身は蜘蛛の体で8本脚。糸を用いて、獲物を弱らせてから味わう。

「住処は蜘蛛の巣なのか?」

「ううん、普通の住居だよ。蜘蛛の巣は狩りの時の一時拠点だね。」



「…とりあえず基本はこんな感じ!」

と、彼女は記憶書を閉じた。

「あたしはいわゆる”基本種”だけど、黒間くんの好みはどの子?」


ラブはニヤニヤ顔で僕の顔を覗き込む。

「…そういうのがズルいんだよ。」

誤魔化すように、少し小さな声で言った。

「えー♡聞こえなーい♡」

ラブは尻尾を揺らしながら、僕の腕に抱きついた。


『サキュバスの形態は多種多様。生まれながらで、性質もまちまち』

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