2−4

部屋に戻ると、寝囊にダイブ。…何故かドッと疲れた。

「お疲れ様ー。今日も色々お勉強したねぇ。」


うん、お疲れさま。と何気なく返す。

そういえば”お疲れ様”という概念はだいぶ日本っぽい。

…いや、そういえば。何故言葉の壁がない?


それを彼女に聞いてみると、

「むしろそっちの世界が異常なんだよー。」

という反応。


「少なくともあたしたちは、意思を直接言語化して伝えることができるし、人間にも本来それはできるはずなの。」

「でも、何故かあの人間界ではそれができない。原因は不明だけどね。」

と、彼女も僕の横にダイブしてきた。


「あ、黒間くんお腹空いてない?なんか食べる?」

「そうだね、お願いします。」


すると彼女は壁面に指を這わせ、ぷにっと押し込む。壁から管がニョっと生え、そこから透明な蜜がドロっと出てくる。

これが彼女たちの主食。あとは果物とかを主に食べている。


「「いただきまーす」」

と、言葉を述べて食事を始める。

正直、僕にとっては味気ない食事だけど、今のところ栄養失調の様子は見られないし、食事に変化が無い点を除けば、合理的なのだろう。


「さっきの、『いただきます』ってのも、局所的な文化なんだよね。」

と、説明すると、

「へー、そうなんだ。」

口をもごもごさせながら彼女は聞いていた。


「あたしたちは人間の文化を、深く考えずにテキトーに真似しているから、そういうの、もっと知りたいな。」


彼女、ラブは僕のことを”知りたがり”なんて評するが、彼女もまた相当だ。それを言うと、少し困ったように、

「うん、”変わり者”だなんてよく言われるよ。」


「あたしたち魔物は、良くも悪くも深く考えないからねー。でもあたしは、いろいろ気にしちゃうの。」

…彼女は少し寂しそうだった。


思わず彼女の手を取る。

「じゃあ、変わり者同士で、仲良くなれるね。」

「…うん♡」



『2日目、終了。相変わらず気が休まる場面がない。』

『退屈しないと書けば聞こえはいいが、適応できたとして、自分の中の何かを失いそうで少し不安だ…』

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