2−3

せっかくここまできたし、とラブは僕を連れて街を案内してくれた。

といっても、大半は住居とお店。オフィスビルみたいなものが無いと、こんなに街は平べったいんだなと、少し感心する。


「さっき見せた魔力タンクだけどね、あれは魔界のエネルギー源でもあるんだ。」

「だから寄与して貢献するのはそこそこ良いことだったり。」

ラブは歩きながら話す。


「この間たっぷり”魔力を補給した”し、がんばればあたしでも上位にいけるかもねー」

僕は気まずくなって、少し咳き込んだ。


するとラブは先の方を指さして、

「あそこを右に曲がると、おもしろい施設があるよ♡」

ラブの言う”おもしろい”はサキュバスにとっての”おもしろい”である可能性がある。

…嫌な予感がした。


現れたのは、ドーム上の肉壁。外壁は艶やかなピンクの肉でできていて、入口はぽっかり開いていて、…正直、なんだかいやらしい。

「ここは劇場だよ♡無料(タダ)だから、はいってはいってー。」


劇場。サキュバスにも美のセンスがあるのかと、少し期待して中に入った瞬間。その期待は瓦解した。


舞台の上では大勢のサキュバスとインキュバスが盛り合っている。

それを半円状に囲うように配置された無数の寝囊には観客が寝転んでいて、笑いながら見たり、興味深そうに観察したり、…一緒になって楽しんでいる者もいた。


「あはっ♡あの子、はやーい!あ、見て見て!すごい体位!真似しよっかな♡」

頭がいたい。目を覆いたくなる。これでは劇場ならぬ”激情”だ。


『劇場:公共”交流”スペース。参加自由・観覧無料。』



ねえ、とラブに声をかけられて、恐る恐る彼女の方を向く。

「あたしたちも混ざろ♡」

「…今日は、絶対、見るだけ!」


さすがにこの文化に適応するには時間がかかりそうだ。

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