2−2
ルール違反は”死”。それを聞いて少し気になったのは、魔物の生き死にだ。
彼らはどのように生まれ、何を持って死とする?
それをラブに質問すると、
「じゃあアレを見に行こう!」
と僕を外へと連れ出した。
街の中心の広場のようなところに着くと、そこには大きな柱のようなオブジェクトが。
人間界のオベリスクを螺旋状にねじったような見た目のそれの内部には、紫色の液体とも気体ともとれない何かが、ドロリ、もやもやと、うごめいている。
「あれは魔力タンク。魔物たちは余った魔力をここに分け与えるんだけどね?」
見ると近くには、”魔力寄与者ランキング”なるものが掲示されていて、上位者の名前が公開されている。
「あれに溜まった魔力と”誰かの強い衝動”が混ぜると、ぽんって自然に生まれるの。卵も親もいらない。」
『無性生殖。魔力と衝動の自己組織化。親個体不要。』
と、ノートに記入する。
「じゃあどうやったら死ぬの?」
「飢餓や損傷で魔力が枯渇した子は、体が霧みたいに溶けて…また魔力タンクに還るの。」
「それが生物的な”死”に近いかな。」
「寿命はないの?」
「魔力供給さえ怠らなければ、原則ないかな。動物に近い魔物にはあるみたいだけど。」
なるほど、老衰という概念がない。彼女らは徹底して時間に縛られていないのだ。
「ところで、魔力タンクに還る、というのは”輪廻転生”みたいなものか?」
「うーん、その魔力を用いて新しく産まれる子はいるだろうけど、記憶も何もないしなー。」
『魔力の循環は、命の循環、ひいては欲の循環。』
先のメモに付け足す。
そして少し息を吸って、踏み込んだ質問をする。
「じゃあさ、ラブは、死ぬのは怖い?」
ラブは特に大きな反応もせず、
「うーん、嫌だなとは思うよ。もっと色々知りたいもん。」
「でも怖いとは思わない、というか、死んだら『そっかー』くらいにしか思わないかもね。」
それを聞いて、僕は赤黒い夜空を見上げた。
僕は、いつまでここにいられるんだろう。
僕の、人間の一生って、彼女たちにはどれくらいの長さなのだろうか。
ラブはそんな僕の横顔をじっと見て、そっと肩に頭を預けた。
「なんか考えすぎ♡今、生きているこの瞬間があればいいの!」
僕はそれに小さく頷いた。
彼女らの刹那的な考え方も、悪くないかもしれない。
ノートを閉じて、僕は。
「うん。ここでなら、今だけで、いいや。」
と、少しそれっぽいセリフを、彼女に聞こえないようにはいた。
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