第2話 竜拳士

 俺の能力を確かめようとしたその時!…


「てめぇで早速この竜拳士ドラゴンブローラーを試してやるよクソ陰キャァ!」


 業魔が炎を腕に纏わせ、俺に突然襲い掛かってくる。


「やめろ業魔!!!」


「やめなさい業魔くん!!!」


 佐々木と海野が叫んで止めに入るが、業魔は止まることなく俺に襲い掛かってきた。


「う、うわぁぁぁ!」


 俺が叫んだその時、


 ズガァ!!!!


 いきなり業魔が吹っ飛ばされた。周りを見渡すと、全員が俺を恐れるような目で見てきた。疑問に思って焦っていると女が口を開く。


「あなた…能力は?…」


「え?ステータスオープン…」


 そうして表示されたパネルには、とてつもなく恥ずかしい最底辺のステータス、名前、年齢、そして女の目を引いたのは…「魔王」の二文字だった。


「なっ!…魔王?!テメェ…」


 起き上がり、俺のほうに寄ってきた業魔が驚く。一気に空気が変わった。全員が俺を恐れるような表情を浮かべ、もう俺には居場所がないように感じた。すると女がまた話し出す。


「…申し遅れました。私はこのグングニル王国の国王の娘、王女であるミランダです。あなた…如月さんはを持っています。国にとって脅威になりかねません。。」


「「「えっ!?…」」」」


 数人が驚いたような声を出すと、佐々木が言った。


「で、でもそれはあまりにもいきなりすぎますし、危険かもしれない能力を町に鼻って平気なのですか?!」


「そ、そうです!…」


 海野も便乗しだしたが、ミランダは平然としている。すると奥から、いかにも国王っぽいおっさんが話しかけてきた。


「貴様!…なんと危険な能力を!…こので能力を封印し、追放とする!」


 そうして俺はあっさり追放されてしまった。召喚勇者ということの口外厳禁と、バレないために奴隷服を無理やり着せられた。制服も、能力も失った俺は、とりあえず王都へ行くことにした。


「はぁ...なんでこんなことに…まぁでも、固有特性は使えなくともスキルは身に着けられるってミランダが言っていたし、いいかー…」


 そうして王都についた俺は、まず冒険者ギルドへ向かった。


「ごめんくださーい…」


「こんにちは!新規のご登録ですかー?」


「はっ、はい…」


 可愛いな、と思った。受付の女性はハーフエルフらしく、整った顔立ちに奇麗な黄金の瞳に白髪の滑らかな髪、エルフ特有の横に長細く尖った耳が特徴だった。

 冒険者登録を済ませた俺は、とりあえず魔の森へ行くことにした。入口付近なら新規でFランクの俺でも倒せるホーンラビット程度しかいないらしい。俺は覚悟を決めて初心者の剣を抱えた。


 続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クラス転移で魔王になって追放された俺は、魔王になんかならないと誓って世界を救う 田村ひさし @Tamura_1008

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画