第4章ー2 怪獣大戦争
神々が地上の世界を創り出していた頃、あらゆるものを地上に創り出した。神々は偉大で巨大な存在だったが、創り出した物は不完全で無秩序だった。そこで秩序を司る人間を作ってエレメントの棲み分けとマナを安定して扱えるようにしたが、人間達はまだ何も知らなかったので神々は巨人達に生きる術を人間に教えさせた。幾星霜を経て、神々は人間を新しく創り直そうとしたが、巨人達は反対して神々と戦争を起こした。神々は怒って天変地異を起こして巨人達を千切り奈落に突き落とした。神々は人間達が歯向かわないようにドラゴン達に力を与えて地上に下ろし、あらゆる場所で人間を監視させた。暗い地の奥底では、巨人達が静かに苦しみ続けながら気の遠くなる程の時が過ぎていった。
ヘヴンズゲートは竜の角から稲妻を発生させながらウルトリキューロスに猛然と突っ込んでいく。
「潰れてくたばれやぁ!神の霹靂『ケラウノス』!」
凄まじい轟音とスピードで突っ込むヘヴンズゲートの電撃の前にウルトリキューロスはグレートアイアースの影に移動して防御に徹するが、
バリバリッドド―――――――ン‼
ケラウノスの衝撃で光沢を放っていた土塊の盾は崩壊されてしまう。しかし、ウルトリキューロスは巨大な竜の全身を両腕でがっちりとホールドして踵を地面に埋めながらも巌太武の鎧で受け止めることができた。
「まだまだぁ!豪放なる噛み付き『ドラスティックバイト』!」
ヘヴンズゲートの7つの首でウルトリキューロスの鎧に噛みついて引き剝がされないようにする。
「天よ。荒れ狂え!雷鳴を轟かす荒天『ライトニングストーム』!」
そのままヘヴンズゲートは呼び寄せた雨雲から豪雨と雷を落とし、ウルトリキューロスの頭上にダメージを与え続けていく。
「電光石火の急展開!ドラゴンの持つ超常的な身体能力でヘヴンズゲートが怒涛の攻めを繰り出していきます!これまでに地属性と金属性の魔法を扱って対抗するウルトリキューロスは大丈夫なのでしょうか⁉」
モーヴィスはスクリーンから発せられる稲光に対してサングラスを装着し様子を伺う。
「ぐっ!・・・圧し折れろ!ティターン柔術三十八手『竜骨折り』!」
ウルトリキューロスは感電しながらもヘヴンズゲートの背中に手を回して掴むとミシミシと背骨を軋ませ鯖折りをキメにいく。
「出ました!地形を変えると言われる巨人族の十八番(おはこ)であるティターン柔術!その体術は一〇八手ほどありそのどれもが巨人による強烈な膂力で成り立つとされ大昔に神々を手こずらせたと伝えられます!ウルトリキューロス、ヘヴンズゲートの逆転の一手となるか⁉」
モーヴィスは目を細めながら戦況を解説していく間にヘヴンズゲートの数本の首が次第に悲鳴を上げていく。
「ぐあああ!」
「コノヤロー!放しやがれ!浸蝕する竜の灼熱『ドラゴンブレス』!」
ウルトリキューロスの頭に噛みついていたヘヴンズゲートの首が巨人の顔を持ち上げ、もう一つのヘヴンズゲートの首が竜の息吹をウルトリキューロスの顔面に浴びせる。熱息の直撃によってウルトリキューロスの兜が剥がれ、顔面が焼かれたウルトリキューロスは痛みを堪えてヘヴンズゲートを持ち上げて後方に投げ落とす。
「ティターン柔術十二手『山谷川崩し』!」
ズッシ――――――ンッ!
ウルトリキューロスはヘヴンズゲートに巴投げをお見舞いしてその勢いのままヘヴンズゲートを地面に叩きつけた。
「イッテェー!この馬鹿力が!」
「チクショーが!首が1つイカレちまった。」
「ぶっ殺すぞ!コラァ!」
ヘヴンズゲートの1つの首がダラリと力無く垂れ下がっていながらも他の首が喧しくウルトリキューロスの吠えたてるが、ウルトリキューロスは虚滅主の帯を地面に触れさせて命じる。
「彼奴を捕らえよ!神をも食らう巨狼の牙『フェンリルジオトラップ』!」
ガコガコッ!バックン!
ヘヴンズゲートがいた場所から金剛石でできた巨大なトラバサミが出現してヘヴンズゲートに食らいつき、堪らずヘヴンズゲートは絶叫を上げる。
「ギャアアア―――――‼」
「グアアア―――!おのれ!震えよ!雷を呼ぶ古の竜『ブロントサウラ』!」
ガラガラガラドド――――――ン‼
ヘヴンズゲートは角や羽から稲妻を辺り一面に放出してフェンリルジオトラップの罠とウルトリキューロスの鎧を剥がしにかかる。起き上がってガードするウルトリキューロスは顔の半分が焼け爛れて灼熱の毒に侵されたのか左目が潰れてしまっている。
「囲め!反射する結晶の檻『プリズムプリズン』!」
ヘヴンズゲートは怒りのままに灼熱の息吹を吹きかけながら雷を打ちつけていく中、ウルトリキューロスは虚滅主の帯に呟いて周りを水晶の角柱で監獄のようにして囲んで難を逃れる。さらにウルトリキューロスは左手を掲げ、
「儂の手に来臨せよ!溶岩に沈む大槍『アラドバル』!」
呪文を唱えるとすぐにマグマを滴らせた巨大な槍が火山口から召喚されてその手に掴む。
「くらえ!ヘヴンズゲートオオォォ――‼煉獄を纏う必中槍『インフェルノジャベリン』!」
ズドドドドドンッ!・・・
「乾坤一擲!ウルトリキューロスが召喚したアラドバルは投げれば百発百中の神器ですが、その高熱で手にした者の手を焼き切ってしまうため術者にとって一発勝負!これは決まったか⁉」
フラグが立つようなことを言うモーヴィスは静まり返ったバトルフィールドに目を向ける。ウルトリキューロスが全身全霊を込めた投擲はヘヴンズゲートの首を5つ貫いていた。
「・・・ダァハハハハアア―――‼惜しかったなぁ、ウルトリキューロス!」
だが、勢いを失った槍の先端は残った1つの首の驚愕した表情の眼前で止まり、残ったヘヴンズゲートの首が安堵しながら崩壊させたフェンリルジオトラップから脱け出すとウルトリキューロスをせせら笑って捲し立てる。憔悴したウルトリキューロスは残っている体力を振り絞って呪文を唱えて地面を摩る。
「最早、四の五の言っておれん。タルタロスの口を開けよ!破獄『プリズンブレイク』!」
ゴゴゴゴゴゴゴッ‼
地響きが鳴り大地に無数の大穴が開くと、そこからタルタロスに幽閉されていた巨人達が次々に放たれていく。それを見たヘヴンズゲートは飛翔して天を仰いで咆哮する。
「誇り高き翼を持つモノよ!地上に舞い降りて戦え!語られぬ飛竜兵の黄昏『ワイバーンアポカリプス』!」
その声に応えたのは上空を覆い尽くす程に無数に飛んできたワイバーンの群れだ。アークにいるモーヴィスはそんな戦況をケタケタと笑っている。
「とうとうお互いの奥の手である一族の投入だ!巨人軍と飛竜兵とがバトルフィールドにて激突!今、雌雄を決する時です!」
ワイバーンの兵卒が空から地上に向かって攻撃を仕掛け、それに対して巨人の軍勢は生えていた木を引っこ抜いてぶん回していった。その一帯は飛び回るワイバーンと棍棒を振るって戦う巨人との乱戦となっていく。
「儂の同胞たるタイタン族よ、こんな訳が分からんタイマンで滅ぶくらいなら、せめて一時でも空の下に出て束の間の自由を味わえ。大地を沸かせ岩を降らす巨人祭『スローンロックフェスタ・ティターンズ』!」
ウルトリキューロスは毒に浸蝕されてダメージの溜まった体を支えながら指輪に呟いて塹壕を作り出すと巨人達をそこに潜ませて彼らの近くに大岩を積み上げる。巨人の戦士達はその大岩を次々にワイバーンに投げて応戦していき、ワイバーンの大群に向かってウルトリキューロスが先陣を切って前に出てヘヴンズゲートを挑発する。
「貴様の最後の首は儂が取る!大いなる牙の戦斧『ベヒモスアイボリーアックス』!」
「テメエの都合なんか知らねぇよ!とっとと消えな!凍てつく紅蓮の花『ヘイルヘル』!」
ヘヴンズゲートは大きな象牙で作り出した両刃斧を地面から呼び寄せたウルトリキューロスを明け透けに罵って距離を置くと、火山の頂から身を切るほどの寒波と大きな雹をウルトリキューロスとタイタン族に轟々とぶつけ続けていく。
「食らえ!大地を砕く黒旋風『ベヒモスラブリュスチュー』!」
ウルトリキューロスは巨大な斧を振り回してワイバーンや大きな雹を打ち落としていく。
「さあ、いよいよクライマックスでしょうか!巨人の投げた大岩がワイバーンを撃ち落として潰していくも、寒波と雹によって巨人達の皮膚が裂けていき体中を真っ赤に染めていきます!惨たらしいぶつかり合い!果たしてどちらに軍配が上がるのでしょうか?」
モーヴィスはそんな状況に目が離せないまま刻々と過ぎていき、巨人と竜との攻防は互いに疲弊していった。やがて、ウルトリキューロスの創られた塹壕は削れてストーンヘンジの様を呈していき毒に侵されたウルトリキューロスは最早体力が底をついて右目が虚ろになりながらも戦斧を支えにして立っているのがやっとになっていた。1つの首で天候を操っていたヘヴンズゲートも疲労困憊で憎々し気にタイタン達を睨みつける。
「ハァ、しぶてぇなぁ・・・。大王よ。これで終わりだ!絶対なる零点『アブソリュート・ゼロ』!」
ヘヴンズゲートは力を振り絞ってありったけの冷気をウルトリキューロスにお見舞いすると、それを受けたウルトリキューロスは立ち尽くしながら凍っていき弱まった心臓の鼓動は程なくして止まってしまう。
こうしてヘヴンズゲートはクレイドルへと戻された。
「2回戦、勝者は『竜帝』ヘヴンズゲートだ!おめでとうございます!こちらの『虚滅主の帯』を戦利品としてお受け取りください。頭数に合わせてネクタルも用意しております。」
ヘヴンズゲートのクレイドルはウルトリキューロスのクレイドルと結合して更に大きくなり、中ではそれぞれ銀の器にネクタルが注がれ、それを口にしたヘヴンズゲートは見る見るうちに全快してそのうち青玉が輝いて徐々に元の姿に戻っていく。
「さあ!制裁の時間だ!敗者は巨人族のウルトリキューロス!その一族郎党は滅んでもらいましょう!」
スクリーンには、戦いの最中にいたタイタン達が急に動けなくなり、ワイバーンの群れに喰い尽くされる様子が映し出される。やがて、ワイバーンが空に帰ると、そこには一つも影が残らなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます