pièce troisième

「おはようございます」

 カラン、と鈴が鳴るのと同時に店の奥から挨拶がある。そこに立つのは、スラリと長身の青年。白の調理着からして、おそらくここのショコラティエか。

「休日出勤、ですか。お疲れ様です」

 あ、はい。よく分かりましたね。

「スーツとビジネスバックを持っていらっしゃるので」

 なるほど。ええ。仕事の打ち合わせでして。あの、カフェ併設ってあったので、糖分とコーヒー、って思って

「ああ……申し訳ありません。日曜日のカフェ営業は九時からでして。でも、そういうことなら」

 カウンターの上を銀のプレートが滑る。どうぞ、と促されるまま、口に含んだ。

 ふわりと広がるミルク感、そしてその中から溶け出すシャープな苦味。

 これって、もしかして。

「はい」

 ショコラティエの手がショーケースを閉じる。

「エスプレッソのビター・ガナッシュをショコラ・オ・レミルク・チョコレートで閉じ込めました。目覚めのコーヒーをイメージしたプラリネです」

 そして行ってらっしゃいと送り出されてすっきりした頭で店を振り返る。

 帰りが閉店に間に合ったら、カフェで仕事の疲れを癒そうと。

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