pièce quatrième

 窓の外がどんより暗くて、雪雲のような塊が空を埋める。

「降るかもって思います?」

 初雪の可能性は天気予報でも。寒いのは嫌なのだけれど。

「私は雪なら大歓迎かも。ほら、こんな」

 ズズン、と重い低音の後、両手が軽やかに遊びだす。

「『雪だるまのワルツ』っていうんです」

 確かにちょっと不恰好な、行き先がわからない弾み方。

「エーリッヒ・コルンゴルト。オーストリアの作曲家ですよ」

 知らない人です。いつの時代?

「二十世紀の映画音楽で有名だけれど、これは十一歳で作った曲だと。可愛いでしょう?」

 言われてみれば、無邪気といえば無邪気で、我慢できずに外に出たみたい。

「だって雪が降ったら、雪だるま作って遊びたいじゃないですか」

 そう言いながら、楽しそうに首を振ってつまびく彼女が子供みたいで。

 雪雲がほんの少し、明るく見えた。



(《雪だるまDer Schneemann》はバレエ音楽で、師匠のツェムリンスキーがオーケストラに仕立てました。1908年作曲)

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