第六章 モンスター☆トリオの作戦会議(in コタツ)

ここはフランケンのアパート。

四畳半にモンスタートリオが集まっています。


季節外れのコタツを囲み、三人は真剣な面持ちでマックポテトを突っついています。


「来月の武道館ライブだが」


ドラキュラが、砂糖5個入りミルクティーをすすりながら切り出しました。


「旦那、そもそもオレたち、楽器なんて弾けるんすか?」


フランケンが不安そうに首のボルトをいじります。

彼は普段、商店街で「ケンちゃん」と呼ばれ、おばちゃんたちを冷やすのが仕事です。


「楽器なんて二の次だ。大事なのはモンスターならではの演出だ。そこで狼男、お前の出番だ」


「え、オレっすか? またキティちゃん持たされるのは勘弁ですぜ」


狼男は動物カフェのバイト明けで毛並みがボサボサです。


「満月の夜限定の『狼体験コース』は時給がいいけど、体力が持たねえし」


「違う、チガウ。サビで満月をプロジェクターで投影するんだ。そこで変身して客席にダイブだ。つぶらな瞳でファンをノックアウトしろ」


「それって、ただのモフモフした大型犬のファンサービスっすよね」


ドラキュラは聞く耳を持ちません。

続けて、

「フランケン、お前はステージの端で天然クーラーとして全力稼働だ。ライブ会場は熱気でムンムンになる。お前の冷気があれば、武道館に雪を降らすことも出来る」


「ただの空調設備じゃないっすか、それ。屋内に雪を降らすったって、屋内には肝心の水分がありませんって。それより、オレにも歌わせてくださいよ」


ドラキュラの独演会は続きます。。

「オレは献血センターの広報で鍛えたトークで、バラードの合間に血液型占いをやる。おいしそうな血液型、じゃなかった、運勢の良さそうな血液型を発表するんだ」


「旦那、それ、看護師さんに怒られるいつものパターンっすよ」


かように、三人の会議は夜遅くまで続いた。


「今度はもっと優しく驚かせよう」


そんな前向きなスローガンを胸に、彼らは世知辛い人間社会でモンスターにしかできないエンターテインメントを模索し続けています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る