第3話


ぼんやりと呆けている私のまえを、トンボが、ふらり飛んでいる。


風に乗って。


そうだ。彼の生まれた日の生まれた時刻の、すこしまえに、おたんじょうびおめでとうメールを送信した、そのときも。


トンボが、ひらり、飛んでいた。


生まれた日の、生まれた時刻の前と後では、なんだか気分が変わってる。


私の生まれた日に、そう感じた。


なにがどうとは言えないけれど。


彼も、そう、だったのか、わからずじまいだったけど。


トンボは、ふらり、どこかへ行った。


あぁ生まれた、と感じた、そのとき。


あたらしい括りのなか、心を、いっぽ踏み出した。


そんな気がした。たんじょうび。


ふらりふらりと、どこかへ行った、トンボの行方も知らぬ間に。


ああ、コーヒーが、からになったよ。


おかわりしようと思ったけれど、やーめた。


ジリジリと照りつける太陽に、もう降参。彼が好き。




<了>

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「森」 ぽふ、 @a-piece-of-harmony

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