第2話

ああ。彼の、生まれた日から、もう、だいぶ経ったんだ。


あのときは、陽射しが、まだ、こんなじゃなかった。


夏を感じられる、暑さの、まだ入り口。


そのときにも、いっしょに居られなかったなぁ。


空が、薄く雲に、覆われていて。


そうして、やっぱり風に吹かれて、彼のことを想ってた。


実家に居て、想う、彼は、まだまだ知らないことばかりで。


だけど。


たぶん、知らないことの多くは、彼の過去の姿だったり、未来に起こる事態に直面した時の彼の表情だったり。


そう思う。


だからこそ。


いっしょに居るとき、ふたりの感じに集中して。


「いま」を感じる「いま」の気持ちを、だいじにするの。


でも。


いまここに彼は居ない。


私は、森のように樹木の生えた、庭のある、家の、子になっている。

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