第2話:奇跡と狂気──臨界の術場

 八塔屋はちとうや市。

 昼下がりのメインストリート。


 幾分交通量が少なくなった6車線の大通を1台の大型バイクが、

今頃珍しいタイプのエンジン音を響かせながら、ストリートを疾

走していく。


 遥か上空には、派手な企業広告入りのAFOアドフライングオブジェクト

が、金属光沢のボディを煌めかせながら浮遊している。


 眩い輝きは真っ青なバイクを駆るライダーの、ヘルメット越しの

顔面に狙いを定めたかのように差し込んだ……


 キキキキーッ、ドカーン‼


 対向車線にはみ出したバイクが、小型トラックともろに衝突した。


 自動車のバンパーは曲がり、バイクに乗っていた少年は盛大に弧

を描き弾け飛び、ぐしゃりと嫌な音を立てて地面に叩きつけられた。

 状況から見て、即死ではないかと思われた。


 暫らくして誰かが通報したのであろう、救急車がやって来た。


 道の端っこに倒れている少年を担架に載せ、救急車に収容すると、

何処の病院に向かうのかサイレンを鳴らしながら走り去って行った。


 落ち着いたレンガ造りの洒落た建物、屋上の看板には「三ツ頭龍神

会医療法人・真船総合病院」と書かれていた。


 メインとなる診療科目は整形外科、そして心臓外科、内科、さらに

神経外科に耳鼻科に眼科、呼吸器科という数多くの科目が並んでいた。


 まさに総合病院の看板にふさわしい、充実した診療科目だった


 そこの第3手術室で今、一人の人物があるオペを受けている真っ最

中だった。


「先生、クランケの心拍数が低下してきています。血圧低下。このまま

では、被験体の生体機能を維持出来ません!蘇生レベルが……体組織崩

壊の危険性63%!」


 モニターを見ている若い技師が叫んだ。


「あ、そう。んじゃあ、バッテリーの電圧上げて。安定剤も1本追加ね。

ついでに筋力増加剤も投与してみようかな。ボディの限界耐性値を知り

たいからね」


 そう言ってメガネの男、どうやらこの手術の執刀医と思われる者が、

何とも面倒臭そうに、側にいる看護師に指示を出した。


「薬剤投与して安定したら、いよいよ本日のメインディッシュ、小型核反

応炉をこの少年の身体に入れるからねー」


 一体何の手術をしているんだー、この医者は?!

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