サイボーグ・グラフィティ

ママンマフィン

第1話プロローグ:白い光の中で

 う、ううん……。


 ベッドに横たわり目を閉じた状態の少年。

 その閉じた瞳の外側に明るい光を感じてたのか、僅かに体が動く。

 深い眠りから意識が覚醒し始めたようだ。


(俺、バイクに乗って事故にあったんだよな……?)


 ヘドロの底に埋まっていたような感じから解放された瞬間、脳裏に

浮かんだ最初の言葉。


(んん?確か俺、バイクに乗ってて、交差点でトラックにぶつかって……)


 続けて記憶の鎖を手繰り寄せる。

 周囲に光を感じて、ゆっくりと目を開けてみる。

 視界は全体に白っぽいフィルターが掛けられたようで、見渡す空間は妙

にぼやけていた。


 少年はその身に起こった出来事を思い返そうとしていたが、衝突後の

記憶はどうしても思い出せなかった。


(まさか俺、死んだのか?)


 周囲が白くぼやけて見えるのは、ここが三途の川の向こう岸だからでは

ないか?

 そんなことを考えつつ、頭を上げようとしたが思うようにいかなかった。


 もどかしさを感じながら、彼は再び目を閉じる。


 思考を自己の内部に眠る『保存記憶』に集中させてみる。

 ゆっくりと、しかし正確に構成された記憶が脳内に現れ、事故当時の

状況がリアルな感覚を伴って再現されていく。

 光琉が頭脳を脳殻に収める電脳化をして、まだひと月も経っていない。

 今現在、電脳機能をフルに使いこなせる訳ではなかったが、記憶更新などの管理はほぼオートで行われるため、彼はブレインシステムに脳波でリクエストを送るだけで良かった。

                          (つづく)       

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