第15話 覚醒力暴走の危機と克服

森の奥からの帰路、ローグは全身に疲労を感じていた。中型ボス戦での連戦、覚醒力の部分的な爆発、身体能力の限界――そのすべてが、ローグの身体に重くのしかかっている。


「……体が……言うことを聞かない……」

歩を止め、ローグは剣を握ったまま深く息をつく。胸の奥で、疲労と恐怖が入り混じり、心拍が速くなる。覚醒力が熱を帯び、制御の限界が迫っているのを感じる。


突然、足元の岩陰から小型モンスターが飛び出す。疲労で反応が遅れ、踏み込みも回避も中途半端になる。胸の奥で覚醒力が暴走しかけ、全身に制御不能の熱が走る。


「……やばい……!」

ローグは心を落ち着かせようとする。深呼吸を繰り返し、意識を身体の奥に集中させる。筋肉の張り、呼吸、心拍――すべてを可視化するように意識し、覚醒力を抑える。


しかし、疲労と恐怖のせいで力は暴走寸前だ。腕が震え、脚が重くなる。目の前の敵に瞬間的に反応できない。ローグは必死に意識を集中する。


「……俺は、制御する……!身体が覚醒力に負けるわけには……!」

拳を握り、身体の感覚に耳を澄ませる。覚醒力を完全に爆発させず、必要最小限で動く――それが自分の生き残る道だ。


一瞬の間、世界がスローモーションのように感じられた。ローグは呼吸と筋肉の連動を意識し、踏み込みと回避を同期させる。覚醒力は暴走寸前だが、意識を一点に集中させることで、少しずつ制御が戻ってくる。


「……できた……!」

ローグは敵をかわし、一撃で倒すことに成功する。心拍はまだ速いが、胸には安堵と達成感が広がった。中型ボス戦で培った身体能力と覚醒力制御が、極限状態でも機能した瞬間だった。


森を抜け、仲間と合流したローグは、深く息をつきながら胸の奥で静かに誓う。

「覚醒力……もっと安全に、もっと自在に使えるように……なるんだ」


疲労で身体は重いが、心には確かな成長の実感がある。Fランクの弱小冒険者として始まった自分の旅――身体能力の強化、覚醒力の制御、仲間との戦術理解、そして限界を乗り越えた経験。これらがすべて、ローグをさらに一段階、強くしていたのだった。


夕日が森を赤く染める頃、ローグは仲間と共にギルドへ帰路につく。身体の疲労は大きいが、心には確かな成長の手応えがあり、冒険者としての自信が胸に芽生えていた。


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