第16話 孤高の修行と身体強化

森の静寂の中、ローグは深呼吸をし、剣を腰に差して立っていた。中型ボス戦、覚醒力暴走の危機を経て、心の奥底に新たな決意が芽生えている。


「……もっと強くなる……誰かを守るためだけじゃなく、俺自身の力として」


ギルドでの評価は上がり、仲間との連携も安定している。だが、ローグはまだ自分の身体能力に限界を感じていた。ならば、一時的に単独で修行し、身体能力と覚醒力の制御をさらに強化するしかない。


森の奥深く、彼はまず基本動作の徹底反復に取り掛かる。踏み込み、回避、剣の振り方――一つひとつを完璧に、限界を超える速度で繰り返す。筋肉に痛みが走るが、それを「成長の痛み」として受け入れる。


次にローグは重りを付けた移動訓練を行う。岩や倒木を跳び越え、斜面を駆け上がるたびに、筋肉と関節が悲鳴を上げる。だが、覚醒力を少量引き出すことで瞬間的に筋力を増幅させ、疲労を最小限に抑えつつ動作を維持する。


「……これが……俺の力……」

心の中でつぶやき、身体と覚醒力の連動を意識する。踏み込みと回避の精度が上がり、反射速度が強化されていくのを肌で感じる。


午後になると、ローグは持久力強化のための連続戦闘訓練に挑む。森の小型モンスターを相手に、休まず攻撃と回避を繰り返す。疲労が全身を支配し、覚醒力が暴走しかけるが、呼吸と意識の集中で制御を維持。身体の限界を試すと同時に、覚醒力の持続力を高める。


夜が迫る頃、ローグは木の上から森全体を見下ろす。身体は疲労で限界に近いが、心には満足感が広がる。今日一日で、身体能力は確実に底上げされ、覚醒力の制御もさらに磨かれた。


「……俺は、もっと強くなる」

拳を握りしめるローグ。Fランクの弱小冒険者として始まった自分の旅は、身体能力と覚醒力の二つを柱に、着実に階段を上り始めている。孤高の修行――その努力が、次の冒険で仲間を、そして自分を守る力になることを彼は知っていた。


月明かりの森の中、ローグは静かに瞑想しながら、身体の疲労と覚醒力の余韻を感じ取る。孤独な修行の成果は、確かに彼の肉体と精神を、前よりも一段高い次元へ引き上げていたのだった。

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