第10話 仲間の危機とローグの覚醒力の爆発

森の奥深く、霧が立ち込める中、ローグと仲間たちは依頼の警備任務を行っていた。森の奥で休憩を取ろうとしたその瞬間、空気が凍るような音が響いた。


「……なんだ、あの音?」

ローグが周囲を警戒する。


突然、森の茂みから巨大な牙を持つモンスターが飛び出し、仲間たちに襲いかかる。ミラが盾で防ぐも、攻撃は予想以上に強烈で、一瞬の隙にケインが吹き飛ばされそうになる。


「ケイン!」

ローグの胸に焦燥が走る。仲間が傷つく――その恐怖が、胸の奥で熱い感覚となり弾けた。


「……俺は……絶対に守る!」

意志の叫びと共に、覚醒力が一気に爆発する。全身の筋肉が通常の限界を超え、動きが超高速で連動する。剣を握る腕、踏み込む脚、体幹の安定――全てが完璧に近い反応を見せ、モンスターの攻撃を瞬時にかわす。


「速っ……!」

リオが驚きの声をあげる間もなく、ローグは正確無比な斬撃でモンスターを制圧する。単独の動きで、複数の攻撃を避けつつ一撃で反撃――これまでの訓練では到底考えられないスピードだ。


だが、覚醒力の代償はすぐに現れる。筋肉が悲鳴を上げ、膝や肩に激痛が走る。呼吸は乱れ、意識が一瞬遠のきかける。全力覚醒は強力だが、身体を極限まで消耗させる危険な力なのだ。


「……まだ……俺は……止めない!」

ローグは意識を集中し、動きを最小限に制御しつつ、仲間の安全を最優先に行動する。ミラとケインは援護に回り、リオの指示も加わり、ついにモンスターは森の奥へ退いた。


戦いが終わり、ローグは地面に膝をつく。全身の筋肉は限界を超え、呼吸も乱れ、汗で全身がべとついている。しかし、胸の奥には安堵と達成感が混ざった感情が広がった。


「……守れた……俺たちの仲間を」

心の中でつぶやき、拳を握るローグ。覚醒力は強大だが、制御できなければ自分も仲間も危険に晒す。しかし、今日の経験で、少しずつ仲間を守るための覚醒力の使い方を学んだことを実感する。


夕陽が森を赤く染める頃、ローグは仲間と共にギルドへ戻る。全力覚醒の疲労は大きいが、心には確かな成長の手応えがあった。Fランクの弱小冒険者――ローグは、身体能力と覚醒力の両立という新たな力の段階に、確実に足を踏み入れたのだった。

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