第5話 初めての仲間との連携戦

朝の光がギルドの広間に差し込む頃、ローグは剣を手に準備を整えていた。昨日のトレーニングで、身体の感覚が少し変わったことを実感していた。腕の力、脚のバネ、体幹の安定感――ほんのわずかでも、自分の動きが滑らかになっているのを感じる。


「今日は仲間との連携演習だ」

マスターが言った。

「森の外れで小型モンスターの群れを想定した模擬戦だ。Fランク同士でも、協力すれば戦えることを知るがいい」


ローグはうなずく。今日はただ自分の力だけで戦うのではない。仲間との動き、連携を意識する初めての実戦――緊張で胸が高鳴った。


森に到着すると、木々の間に小型モンスターの姿がちらつく。ローグは深呼吸し、仲間と目を合わせた。


「俺は前に出る! 視界を切り開くから、援護よろしく!」

ローグは声を張り、先頭に立つ。体幹の訓練で安定した足取りが、自信を少しだけ与えてくれた。


ミラが隣で盾を構え、ケインは後方から弓を構える。リオは全体を見渡し、指示を出す。


「よし、攻撃開始!」


モンスターの群れが森の奥から飛び出す。狼のような姿、小型の爬虫類型――多彩な敵が一斉に襲いかかる。ローグは剣を構え、覚醒力に頼らず、自分の身体を使って回避と攻撃を繰り返す。


「来る!」

一匹の狼がローグに飛びかかる。今までなら反射的に覚醒に頼っただろう。しかし、今日は身体だけで動く。踏み込み、横に跳び、剣を振る。空中でタイミングを合わせ、一撃をモンスターの肩に当てた。


「ナイス!」

ミラの声が背中を押す。ローグは笑みを浮かべながらも、全身の感覚を集中させる。


モンスターが分散し、複数が同時に襲いかかる。ローグは咄嗟にケインと目を合わせ、左に移動する合図を送る。弓矢の援護が飛び、モンスターはダメージを受けて怯む。


「……これが……連携か」

胸の奥で新しい感覚が芽生える。訓練で培った身体能力が、仲間とのタイミングで連動すると、単独の力以上の威力を発揮する。


数分後、モンスターは森の奥へ逃げ去った。ローグは息を荒くし、膝に手をついた。全身が汗でべとつき、筋肉は張りつめた痛みで悲鳴を上げる。しかし、心は充実していた。


「やった……俺、ちゃんと戦えた」

小さな達成感が胸に広がる。覚醒力に頼らず、身体だけで仲間と連携して戦えた――これは初めての成功体験だった。


マスターが森の入り口で待っていた。

「うむ、初めての連携戦としては十分だ。お前は少しずつ、だが確実に成長している」

その言葉に、ローグは胸を張る。仲間と共に戦い、身体を使い、力をコントロールする――これこそ、自分が目指す成長の形だと実感した。


夕日が森を赤く染める頃、ローグは仲間と共にギルドへ戻る。疲れた身体を感じながらも、心には新たな自信が芽生えていた。


Fランクの弱小冒険者――ローグの成長は、仲間との連携を通じて、また一歩前進したのだった。

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