第23話
ルーシャンが楽しそうに魔法陣の研究をし始めた。
その横でニコニコと、楽しそうなルーシャンを眺めるバーナビーたちのほんわか空間♪
が出来上がってたので、お邪魔かと思って退散しましたよ。
次は必ず遊んでね?天使サマー、しくしくだよ?
「天使様、魔法学に行かれますか?」
「行く!!!」
【こいつはバカ】と、貴族の額に書いた人物が知りたくて、会いたいとお願いしたら、城で抱えている学者であり、魔法学オーナーという地位についている者だと判明した。
ちなみに、大笑いしたあの陣の内容を聞かれたけど、凄く凄く面白い人だから会って直接聞きたいからそれまで内緒じゃ駄目?と、本当にダメ元で聞いたら、いいよー、別に害ないしねー、お前にはー。なんて、軽々しくお返事頂けたので、きっとあの貴族の額には【こいつはバカ】という文字が、今もあるんだろう。
「んふっ、ふふっ、ふっ、」
「楽しそうですね」
だってリンジー!人の額に「バカ」って書く人だよ?それも堂々と!気になるじゃん!
るんるん気分な天使様をご覧になりたい場合は、こちらの魔法学図書までお越し下さい。
私が来ることは、通達済みだったらしく、頭を下げて…いつから頭下げてたの?大丈夫そう?
後頭部が並んでいる通りを抜けると、奥で待っている人間が一人。
「顔を上げてください」
顔を上げながらも、人の良さそうな表情を貼り付けている男はつり上がった目を垂らしているが、緑の瞳は冷たく、同じ色合いの髪はサラサラと触り心地の良さそうな髪が背まであり、それが柔らかな印象を出している。
「魔法陣が気になって来てしまいました!ヒナノです、よろしくお願いします!」
「わたくしの方こそ、よろしくお願い致します」
簡潔な挨拶を済ませた後、この男が作ったという魔法陣が見たいとお願いしていた事もあり、スムーズに案内され、男の横で魔法陣が並べてあるテーブルの前で立ち、眺めていた私はいい駒が手に入りそうだと、うきうきるんるん気分で脳内に直接話しかけた。
『いいのかなぁー?』
『!?』
『テレンス公爵の屋敷に“だけ”、力を入れた魔法陣を内密で渡したなんて知られたら……いいのかなぁ?』
『!?』
テレンス公爵が伴侶を守る為に依頼か、脅しただけなんだろうけど。
『親指にはめてある指輪に触れるだけで、声に出さなくても、お前たちが使用している連絡石のように使えるよー?お話しようねー?どうすればいいか、君の今後でも語り明かそうよ!』
『
『お前も大概よ』
そんな事を言う男も大概、人を騙しながら生きていると思うけどねぇ。
「ご挨拶が遅れました。わたしく、ロイド・シャノンと申します」
「ロイドって呼んでもいいですか?」
「喜ばしい限りです」
目の前に並べられている魔法陣と、テレンス公爵の屋敷に張り巡らされている魔法陣の描き方が似ている。
私もロイドのように癖をなくそうとはするけれど、やっぱり魔法陣を新たに作るとなると、癖が出てしまうものだ。
「もう少し眺めててもいいですか?」
「もちろんでございます」
「わあ!ありがとうございます!私の事もヒナノって呼んで下さいね!」
「はい」
“ロイド・シャノン”。
この名前は覚えがある。
この国に来て、初日に読んだ本の著者の一人だ。
皮肉が効いていて、面白い人間だと記憶している。
『駒になって欲しいの』
『面倒だな、断る』
『“神の怒り、
『…………厄介な奴に捕まったようだ』
ロイドが書き記していた。
天使という存在は必ずしも、王の元へ来ないのではないか。という持論を。
それを示す本があり、是非とも読者の皆に読んで、感想を聞かせて欲しいと書いてあった。が、そんな本は存在しない。
調べた訳ではないけれど、そもそもロイドがバーナビーを賞賛したあの本自体、皮肉だらけの内容だった。
『バーナビーに反抗してる人がいるーって天使サマーから伝えてあげようかなぁ?』
『駒になろう』
『ありがと♡なにかあったらお願いするわ。それと…』
あの本を読み解いていくと、バーナビーが王命として、名誉な地位として与えた魔法学オーナーという立ち位置にロイドは不満を覚えているという内容だった。
大方、自由に動けなくなった身分を嘆いているんだろう。
そして、読んで欲しいと伝えたタイトルの意味は、「私の不幸を読んで面白かったか」という含みが込められていた。
『天使サマーがお前を気に入り、私と“共同”して魔法陣を作り上げる。その為に、今している仕事を止めてまで天使の言う事を聞かなければならない』
『!』
『どうかしら?これが“読者”からの回答よ』
『………乗った』
自由に研究したい気持ちは分かる。
立場が上がると厄介で、この男の言う通り、面倒な事しかない。
「これ……」
「どうされました?」
「ここの線が………あ、こっちに繋げてみるのは?」
「………なるほど」
本気で楽しんでますね。
良きかな。良きかな。
「あ、あっちも!基礎が崩れてるから発動しないんじゃない?」
「!」
あっちこっちと口を出して、ロイドを翻弄する私は随分と楽しそうに見えるだろう。
あ。
『そういえば、【こいつはバカ】が面白すぎて笑っちゃったんだけど、どう誤魔化せばいい?』
『そのままで構わない』
『そう?』
『天使様の気に入りになったんだ、それくらいどうにかなるだろ』
相変わらずこの国の人間は天使サマーに甘い。
「リンジー」
「はい」
「あの…えっと…」
言いにくい顔をして、どんどんと顔を傾けると、跪いて話を聞こうとする優しい友達。
「なんでも仰って下さい」
「うん…あの…」
「はい」
「本を読むのも好きなんだけど…魔法陣の構築も好きで…」
「くすくす、見ていれば分かります」
「う、うん…それで、この人みたいに構築出来た事なくて、む、無理ならいいんだけど!で、できればこの人と一緒に…その…」
「聞いてみましょう」
「ふわあっ…!ありがとう…!リンジー!」
『気色の悪い声を出さないでくれますか?気が散る』
うるせぇ、殴るぞ。
「あのね!」
「はい」
「一瞬で服を着替えられる魔法陣を完成させてみたいの!」
「「「「「「「!」」」」」」」
なんてわがままが、スムーズに通り、ロイドは私の駒となりました。
ちなみに、あまり会ってはいません。
構築出来そうな時や、潰したい貴族がいる時は手伝ってもらったり、ロイドが躓いた時に助言として向かうくらいで…というより、指輪に付与した力はそのままだから何時でも話しかけてくるし。指輪の説明も求められたけど、それは秘密にしておいた。
力の説明なんて人間には理解出来ないし。
あ、そうそう、バカと書かれた貴族は元々問題があり、その証拠集めもネチネチネチネチと、長年取っておいたロイドのお陰?で、ロイドが罰を与えられる事はなかった。
いやらしい奴だ。友達になれそうだよ。
私が理解出来たのは、アレスが与えた翻訳魔法のお陰という事になったので、私も問題ありません。
あ、ロイドがやるはずの仕事は全て、誰かに任せたみたい。
毎日楽しく魔法陣を構築しているそうですよ。
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