第24話


「「…」」

「「「「………」」」」

「「…」」

「「「「………」」」」


本を読む毎日に戻った私は、ディアブロの観察を新たな日課としている。


「「…」」

「「「「………」」」」


周囲がおかしな目で見ている事にも、もちろん気付いている。


「「…」」

「「「「………」」」」


だけど、そんな事よりも気になるんだよねぇ…。

一瞬でもデズモンド様と重ねてしまった私は、彼の事が気になりすぎている。


「「…」」

「「「「………」」」」


読んでいた本から目を離して、ディアブロを見つめ続けてる。


「「…」」

「「「「………」」」」


デズモンド様のような者に出会った事など、一度もない。

もちろん誰一人として同じ人間なんか存在しないのは承知だ。

けれど、どこか似てるなぁ…なんて事も有り得る。

色々な世界を見て、様々な者たちと関わりを持った事のある私は、デズモンド様のような人と出会った事は一度とない。

似てるかも?なんて思った事もないんだ。

だけど、彼の行動や言動をデズモンド様と重ねると、“似ている”と思ってしまった。

そして、そんな人間が存在する事に知的好奇心が益々、湧き上がってしまった私は、ついに彼をじっっっ………と、見る行動に映った。


見ていれば何か分かるかなぁ?ってね。


デズモンド様も無言が多い人だったけど、初めて会った時から分かりやすい態度と、私と………。


あ。


そっか。


デズモンド様と会った時は、人生に疲れていて、でも新しい居場所で嫌われたくなくて、たくさん話しかけたんだ。

言葉は返ってこなくとも、あの空間を楽しんでいたのを………思い出した。


「こんにちは」

「…」

「「「「………」」」」

「今日はいい天気ですね!ボードゲームは好きですか?私はなんでも好きなんです」

「…」

「「「「………」」」」


なにをしているんだろうか。


彼に重ねて見てしまっているから、こんな言葉を投げかけるのか………。

彼を彼として見ているからこそ、研究の為に話しかけているのか………。


ううん、どちらもやめよう。


デズモンド様が言ってくれたように、今を見れば分かる事もあるかもしれない。

それなら思惑なんて投げ捨てて、普通に会話を楽しもう。

もしかしたら彼は、邪念や、浅ましい気持ちを汲み取るのが得意なのかもしれない。


「緑茶はありますか?」

「あります」

「「「「!?!?」」」」


そういう事だと、結論付けておこう。


「好きですか?」

「…」

「あんまりですか」

「…」

「私の作った緑茶、飲んでみますか?美味しくできたんですよ!」

「…」

「嬉しいです!冷たいのと、熱いの、どっちにしますか?」

「冷えている物を」

「はい!」

「「「「!?!?」」」」


ふん。

話せば返ってくる。

なんだか、デズモンド様のように見えてきてしまうけど、それは仕方がない。

そうなった時は一度、言葉を交わすのをやめて、彼を、今を見れるようになったら、また話しかける事にしよう。


「はい、緑茶です」

「…」

「美味しいですか?」

「…」

「普通ですか?」

「…」

「そうですか、他にも思い付いた飲み物を渡してもいいですか?」

「構いません」

「「「「!?!?」」」」


彼は観察するだけでは足りない。

対話をしなければ分からない事が多い。

だって、彼も自身の事を理解していないと思うから。

対話して初めて気付く事の方が多いんだ。

私も彼も。


彼を知る為の手段を理解した私は、本に目を落としたはずなのに…。


「あー!」


リンジーに奪い取られました………。


「支度中だったの、忘れてたでしょ」

「……忘れてました」


貴族たちとのお茶会は、最初以降、スムーズに終わり、今日は庭園で他国にお披露目をする日。

室内庭園じゃないよ?招く場所にある外の庭園。

迎賓館の近くにあるそこは、室内庭園と異なる美しさが存在するというので、楽しみにしています。


「迷子にならないでよ」

「本当にいつも思うんだけど、グロリアって私の事、なんだと思ってるの?」

「最近は変な女」

「どこがだ?」

「ディアブロを見つめてたと思ったら、今度は話しかけてるし。二人共、色恋には見えないから変に見えるのよ」


確かに!


「仲良くなりたい……違うか。知りたいの」

「なんでよ」

「うーん………稀有だから、かな?」

「「ん?」」


リンジーまで気になってたのか。


「ディアブロみたいな人、珍しいから」

「そうでしょうね」

「さ、あとはドレスに着替えるだけだよ」


リンジーはもうどうでも良さそうだ!


「「「…」」」

「…」


これは一体なんなんだろうか?


「ディアブロ?早く出て行って」

「無理だ」

「はあ?」


着替える時は側仕え以外、外に出るのが決まり。

なのに、なんでか居る。

懐かれた?のか?


「ディアブロ」

「やり方を教えて下さい」


私に聞かないでくれ…。


「なに言ってんの?」

「ディアブロ、外に出て行かないと問題になるよ」

「やり方を教えて下さい」


柔軟性という言葉を教えてあげたいよ…。


「えーっと…今日は他国の人達が来てて、どこでも危険だから、あー…室内にも護衛を置いておかないと、テンシサマフアンダナー」

「「…」」

「やり方を」


ドレスの着方だよね?

私も分かんない!


「リンジーに聞いて?」

「どうやる」

「「………」」


うん、ここまでくると恐怖だね!


「………説明してる時間ないから、見て覚えてよね」

「…」

「なんで私には無言なのよ!?」

「「…」」


うん、グロリアにだけではないから安心しなよ。


「今日来る人達は覚えてる?」

「うん」


リンジーのお節介は日ごとに増している。


「国に来てって言われたら?」

「着いていきません!」

「美味しい飲み物とケーキがあるよって言われたら?」

「え?気になる」

「取り寄せてあげる」

「はい!着いていきません!」

「必ず、俺たちの側にいるんだよ?」

「はい!」


そんな感じで出発です!

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