第20話


『家作ってー』

『あとでねー』


今日も探索をした後、図書館に行き、まったりと本を読んでたらヘディから声がかかった。


「リンジー寝た……グロリア」

「ちなみに探索から3日経ってる」


らしいです。


「グロリア寝たい」

「良かった…」

「なにが?」

「こっちに来て一度も寝てないって聞いてたから…」


何回か寝たフリしたけど…あ。起きちゃったフリしたんだった。


「心配するの?じゃぁ、寝るようにするね」

「別にいいよ、勝手に心配してるだけ」

「そうなの?」

「どうでもいいから、眠いなら寝て」

「うん」

「起きたら枕元の連絡石で伝えて」

「分かった」

「街歩きまで寝てたら起こすから」

「はあい」


という訳でヘディと遊んできまーす。


「あはあ♡」

「お邪魔しましたー」


人間には見えないようにしてて良かったよ。

モナハン王は見た目通りな感じだね。うん。

まだ始まったばかりみたいだからなー、どうしよ。なにしよ。なんて、宙に浮きながら、お昼なのか薄い色の月に寄りかかってた。


日本のような、宇宙がない私の世界での上空は、見えないナニかに阻まれるようになっていて、どの世界にも必ず、可愛らしい扉がついている。

開け方を知らなければ、神々しか通れないそこを通ると天界に行けるようになっていて、着いた先の地面には様々な扉が無数に広がっている。そこから世界の行き来が出来るけど、わざわざ扉を使う者なんていない。


太陽は夜になると消え、月を目立たせる。

朝になると太陽が現れ、月を薄くする。


けれど、月はいつだってそこに在る。


「今日はいい月ですね」


独り言は消えていくのに、


私は消えていかない。


『ここに、あん♡建てておいてほしー』

『設計図は?』

『そこにおいてあるっ、きゃっ♡』

『はーい』


向かった先にはご丁寧に資材と、設計図が置いてあった。

私には資材なんていらないって知ってるのに。こだわりでもあるのかな?なんて、見ていくと……。

うん、確かにね。足らないところもあるね。

「必要な分だけ自分で集めたの、偉い?」なんて思っていそうだ。

魔法陣に魔力を流して、足らない部分を付け足してー、あとはちょこーっと変えて、うん。


暇になった。


………


寝よう。




*********************************




「ヒナノ!ヒナノ!」

「デズ…モンド、さま?」

「良かった…魘されてたみたいだったから」

「…」


必死な声がデズモンド様に聞こえたけど…勘違いだったね。リンジーおはよ。


「起きれる?」


鉛のように重怠い体は起き上がれそうにない、なんならまた寝ちゃい………。







ぅぅ……ぐらぐら揺らさないでぇ…。

吐きそうだよぉ…。


「起きた?」

「…」

「着替えるんだけど…立てる?」

「…」


無理。

また寝ちゃった私は既に、化粧が終わってて………街歩きか。

起きなきゃ…でも立てそうに……浮けばいいか。


「わ、こ、このまま着替えさせるよ?」

「…」


お好きにどうぞ。

その間になんとか目を覚ましておくよ。


「本当に寝起きが悪いね」

「…」

「グロリアを呼んでくるから待ってて」

「…」


その間は寝ててもいいって事ですか?

………。

嘘です。起きます。


「ふあ…」


『ヒナノ!ヒナノ!』

『デズモンド様!』


あの時…私が私であると気付いていればこんな事にはならなかったのに…。


「ヒナノ、起きれる?」


いえ、起きてます。

グロリアは今日も可愛いね。


「トリディース食べるんでしょ」


グロリアの好物だっけ?


「ふあぁぁ……んー……」

「はい、お水」


なんとか着替え終わる頃には目が覚めて、きちんと起きれました。






「浮いてもらう事になるんだ」

「うん」

「勝手に行かないでよ」

「うん」

「良かったら手を降ってあげて」

「うん」

「迷子にならないでよ」

「リンジーは分かるけど、グロリアは私をなんだと思ってるのかな?」

「ガキ臭い」

「おい」

「なによ」

「大人な魅力もあるだろ!?」

「「…」」

「リンジーまで無言!?」


無言を貫くリンジーにショックを受けながら転移出来る場所まで移動する。

私と一緒に転移する者たちと一緒に転移して、転移先で既に待っている護衛達が目に入ると囲まれ、あっという間に周囲から見えなくなる。


「「「「「「「「「「「「「天使様ー!!!!!!」」」」」」」」」」」」」


いや、見えないだろ。


野太い声でワーキャーと言ってるけど、なにをどう見たら天使様が見えるんだ。


ふむ。

 

護衛には悪いけど、まぁ、そもそも護衛っていうのは守る為にいるんだし、いいか。

囲まれている中から上に飛んで、くるんと1回転してから、少しだけ飛んで、ピタッと止まると、わあ!周囲から丸見えですぐ殺させそうー。な、ところで手をふりふりする。


「「「「「「「「「「「「「天使様ー!!!!!!」」」」」」」」」」」」」


止まったりくるくる回ったりしながら進んで行く私に合わせて、すぐに陣形を変えて守ってくれてる護衛達が着いてきた。


「天使様ー!受け取ってー!」


その言葉を拾い、言われた先まで向かった。


「て、天使様…」


君が受け取ってー!なんて言ったんじゃん。


「ありがとう」

「は………」


またまたくるくると戻って手をふりふりしてると、みんな受け取って欲しい物や、握手を求めてきたから一人一人対応した。

神々と同じで、私に触れたり、渡したりしたいんだろう思いながらも、やっぱり人数が多いなぁ…なんて目の前の景色を眺めていると、リンジーが果実水を渡してくれた。

なんて優秀な側仕え何でしょうか。

グロリアの警護も完璧だ。

女性だからという事で任命されたグロリアは側仕えと、強き者を側にという意味合いでも護衛を兼任している。

私的にはどっちでもいいんだけどね。

近くに居てくれるならなんでも。


「天使様ー!」


はーい、今行きますよー。


とっくに戻る時間になっても居座ってる私は待ってるのだ。

じっと待つのだ。

手をふりふりして、みんなと言葉を交わして待つのだ。


「あちらにございますよ」

「ありがとう!」


グロリアが案内してくれた場所はトリディースが売ってる場所。

屋台料理なん………あ、あれ?夜会の時に土で焼いた野菜食べなかったんだけど!?テレンス公爵!どうなってる!?


「こちらを持って下さい」

「うん」


串に刺さってるスポンジは初めて見たし、スポンジが隠れて何倍もあるクリームも見た事なかったし、これをどうやったら落とさず食べられるかも分からない。


「落とさず食べるやり方が流行っているんです」


変なの。

いただきまーす!


「ん、おいひー!」


ちょっと硬いスポンジはカステラに近く、生クリームは場所によって味が違う。

口の中がごちゃごちゃして、喧嘩してるけど、面白い食べ物だし、不思議と美味しい食べ物。


「こちらはテレンス公爵から」

「ん!土!」


街歩きで渡してきたという事は…。


「もぐっ!もぐもぐ!んんっ、故郷の味だー!美味しい!美味しすぎる!この世界で食べられると思わなかったー!」


屋台で広めるつもりか、天使様の味!なんて売り文句でどっかに流すんだろう。

声高らかに伝えるね?

でも、本当に美味しい。


「あとで一緒に食べようね」

「「はい」」


トリディースを大量に買い込んで空間収納に入れて、あとは帰って二人と食べるのだ!


「「「「「「「「「「「「「天使様ー!!!!!!」」」」」」」」」」」」」


ばいばーい、またねー。

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