第15話
モナハン王は確認に来たらしい。
天使という人柄を。
そして、バーナビーにも会いに来たらしいモナハン王は、バーナビーとルーシャンと三人で飲み明かしたんだって。
「これはどうだ?」
「こっちも似合う」
「…」
そこまでは知ってる。
ヘディが「構ってくれないいい!ヒナノ!ヤ」なんて言いながら天使サマーの部屋に入ってきたから知ってはいる。
ちなみにちゃっかり不可視化をして来たヘディを追い返しておいた。
ヤる気はありません。
飲み明かした二人はモナハン王から構ってやれとでも言われたのか、早速?商人を呼んで、あれこれと勧めてくる。
「「どっちがいい」」
嬉しいんだけどね?忙しいんじゃないの?天使サマーご降臨ー!で忙しいんじゃないのかな?
ちなみにあの日の夜も寝ると伝えてから、光のの元へ向かって家と光のコレクションを建ててきた。
20年後にまたお願いにくるだろう。
内装のデザインも最小限にお願いされた私の目からは、今すぐ二人きりになりたい!なんて雰囲気やらを感じたので。
ヘディは考え中らしい。
一度戻って設計図を書いてもらうんだって。
「どっちも…かな?」
「「そうか!」」
洋服や………なんだろ?これ、お香置き?違う?うーん…え?花瓶?そうなんだ。なんて、訳の分からない物がズラッと並べられた品々全てを買い与えようとしてくる二人は確か…。
ああ。
「聖樹の元に行かないの?」
「「………」」
そういえば子どもが欲しいって言って……あ、やべ。
これ、テレンス公爵との会話を盗み聞きした会話だった。
「仲良しじゃないの?」
「仲良しだぞ!?」
「そっか、良かったぁ。子どもは時期じゃないだけなんだね」
「「…」」
危ない。危ない。
無神経に人様のご家庭に首を突っ込む無邪気な馬鹿を演じられたよ。
「そう言ってたよね?」なんて言わなくて良かった…。
「「子ども…」」
どうせ忙しくなって行けなくなったんだろう。分かるけど、その幸福を摘み取ってはいけない。
どう動こうかなぁ…二人が暇になれる時を作れるには……うーん…。
私馬鹿だからなぁ…。
あ、引っかき回しちゃう?
「そうだ!モナハン王に会った事も嬉しかったんだけどね?」
「ああ」
「精霊様とヘディと友達になれたのも嬉しかったの!これから先も、色んな人と友達になれるかも!なんて思ったら、ふふっ、嬉しい!毎日楽しいね!」
「そうか、そうだな…私たちが思う関わりとは異なる関わりを持てるかもしれん」
うんうん、天使サマーを表に出して、幸福の証として証明したら貴族の中に潜り込んで、テレンス公爵みたいに使える人間を増やせるようにしようか!
駒をたくさん作るのだ!
「「仕事ができた」」
「うん、いってらっしゃーい」
私も商人に用はないから。
「リンジー、探索したい」
「かしこまりました」
仕事しよ。
気遣わなくていいのにね。
どうせ「瞳が死んでる」なんて言われたんだろう。
気にしなくていいんだよ、私だってもう…どうしたら輝きを取り戻せるか分からないから。
それに、子どもが欲しいのなら“疑似”で満足せずに、己らの子を慈しんで欲しい。
愛情を与え、教育を与え、その心にはいつだって傍に在ると、そう…伝えて欲しいから。
もちろん私も愛されたい。
でも今じゃなくていい、落ち着いた時に愛を与えてくれればそれだけで嬉しいし、離れていても、気にしてくれる心があると分かるから…今でも充分愛されてると思えるよ。
「ここはなに?」
「会議室ですよ」
「…さっきもあったよ?」
「他にもございます、ご覧になりますか?」
「会議室は大丈夫」
「はい」
そんなにたくさん必要?必要かな?
ていうか会議だけで人生終わりそうだな!
今の私が女王となるならどんな国にしようかなぁ…。
うん。
やっぱりデズモンド様のような国政にしたいな。
どんな国より、あの国が一番大好きだ。
私が作った国よりも、魔王様の国が今でも大好き。
「あの人なに持ってるの?」
廊下の先で人間が持っている箱からいい匂いがする。
「キャンドルですよ、挨拶に使用する物です」
ああ、アレスに毎日お祈りを捧げるとかいう習慣か。
お前もやる?なんて言われたけど、丁重にお断りしておきました。
子に祈るって、なんかちょっと…謝ってる気になっちゃうから。
アレスは人間が好きだから祈りの声を聞いてそうだし。
「あそこはなに?」
「遊び場ですよ」
「え!?できる?」
「いえ……体を動かす場ですので…」
「そっか、やめておく」
「賢明です」
腕自慢でもしてるのかな?
楽しそうにはしゃいでる人たちがいる。
あ。
私に気付いてやめちゃった………。
「そうだ!ギター!」
「用意はできております」
「はや」
「くすくす」
欲しいとも言ってないのに…。なんて優秀なんだ!
「歩く練習に戻る」
「かしこまりました」
最近は拙いけど歩けるようになってきたんだよね。
あとちょっとだ!
城探索は一度でする必要ない。
むしろ何十回にも分けて見て回った方が、天使という存在を目にする機会が増えていいだろうと思い、その日からなんとなくの感覚で探索したり、ギターを弾いたり、本を読んだりしていた。
今はギターを弾いてる。
ラグの上で座って弾くのが好きなんだよね。
最近のマイブームです。
ん?グロリアが来た。
あれ?リンジーもグロリアも居るのは珍しいな…。
「わっ、ご、ごめんなさい!」
「構いませんよ、お怪我は」
「ないよ!こぼしちゃってごめんなさい…」
「いいえ、着替えましょう」
「はい、あ、グロリアにしてもらうから大丈夫だよ!」
「うん、待ってるね」
三人でお茶出来るかなぁ?
わざとこぼした飲み物は君が洗浄してくれたから綺麗だけどね?着替える必要あるかな?ないよね?
護衛を外に出したグロリアはテキパキと服を着せ替えてくれる。
「グロリアの好きなお菓子はなんですか?」
「…トリディースです」
「どれですか?」
「王城で出る物ではありません」
「じゃぁ、街に出たら食べてみたいです」
「かしこまりました」
「私は森で暮らしてましたから、外が楽しみなんです。グロリアの好きをたくさん教えてくれると嬉しいです」
「…………終わりましたよ」
「はい、ありがとうございます」
グロリアにも意識を尖らせている私は、本を読んでいる合間や、こういう機会に、二言三言、話したりしてる。
もう少しかかりそうだと思ったけど、案外単純なのか、心を開いているのを感じる。
そのうちディアブロについて聞けるだろう。
分かる限りでは、この女が一番、ディアブロに近しい。
♪♪♪♪♪
ギターも本も、没頭できるからいい。
彼のように「無」になれて好きだ。
「すうーっ………」
久しぶりに歌おうかな。
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