第14話
モナハン王とバーナビーはお友達という、間柄らしい。
「建物を新しくするのか」
「ああ、神様が現れ、説明してくださったのだ。今、壊す時だと受け取った」
「天使もいるからな。ちょうどいいか」
「他にも新しくする国はあるか?」
「喧嘩2国は競うだろう」
「ああ…」
私の動向をいつもより鋭く見つめているのはディアブロだ。
ホットチョコレートを飲んだ私に危惧しているのか、「体に不具合がおきない」という事実が本当なのか探ってるってところかな。
「天使」「天使様」
「なあに?」
「「遊びましょう」」
君たちの遊びに付き合える天使サマーってどうなんだろう?
「なにして?」
「「マージャンを」」
好きだね。君たち。
ていうか、この国にもあるのか?
いや、でも、バーナビーたちは知らなかったみたいだし。
「今日教わりましたの」
「好きでしょ?」
ああ。
私の事を知ってるのか、この淫魔は。
どこかで見かけたのかな?
「三人で?」
「そうねぇ…」
「でしたら闇のを呼びますわ!」
「それがいいわ、天使、ゆっくり話しましょう」
いや、特に話すこともないんだけど。
あ、いや、お喋りは嬉しいよ?
「え、えへ、えへへ、ひ、ひかり、の、」
「遅いですわ」
「ご、ごめん、ね」
うわぁ……。
凄いな、闇のは。
紫の色味を持つ闇の精霊は、光の魔力が粘っこく、がんじがらめのように巻き付いている。
精霊は己の力しか扱えない。
これは基礎だ。
闇なら闇、光なら光。
そして、それらの力は世界から吸い取る為、ここにいる精霊たちに、力の使い方を眠っている間に“理解”したモノだけで立ち向かおうとする神が存在したら、負けるだろう莫大な魔力量がある。
けれど精霊もまた、世界創世した瞬間、生まれ、眠り、そして力を理解する。その理解した力だけでは人間に敵う事も出来ない者たちも存在する。
要は理解したあと、“お勉強”をするかしないかの差だ。
「え、えへへ、は、はじめ、まし、て、ぼく、や、闇の、精霊、天使様に、あ、挨拶を、こんに、ちは、」
「こんにちは!ヒナノって言います!仲良くしてね?」
「ふへ、ひ、光、の、」
「いいですわよ、ヒナノ様でしたら」
己の力のみしか扱えない。というのは、逆に言えば、他者の力を取り込むことが出来ないのだ。
だからこんなに光のの魔力を纏ってしまえば、肉体に損傷を受けるんだけど…。
「えへ、えへへ、」
とっても嬉しそう。
その損傷が二人の愛なんだろう、とっても幸せそうな二人だ。
いちいち許可を取る闇のに嬉しそうにしている光のと、そんな喜びを与えられた事に嬉しそうな闇のはお似合いだ。可愛い子たちだね。
「ヒナノ、こっち」
私の手を引く淫魔は、「今、名前聞いたんだからもう言ってもいいでしょ」な態度で接してきます。
なんだろう?
どうしてこの世界で出会う者達ってこんなに可愛いんだろうか。
「あ、待って」
「うん」
バーナビーの元に行って、建物を壊すならと、用意していた物を渡す。
「壊すの?」
「心配しなくていい、あの部屋はそのままだ」
「うん、そんな心配はしなくていいんだけどね?眠ってる間に神様が魔法陣くれた」
「え!?」「は!?」
おお…。
モナハン王も驚く事柄があるのか。
「ここに資材を置いて…」
「「…」」
聞いてる?聞いてね?
「えっと……あとでがいい?」
「い、いや!聞きたい!」
やだ、可愛い。
5メートルほどの長さがある魔法陣だからちょっと幅取っちゃうけど。うんしょ。
「リンジーありがとう!」
「い、いえ、構いません」
そんな恐る恐る魔法陣を触れなくてもいいよ?私の手作りだからね?
よいしょ、よいしょ、と、リンジーと広げて、と。
「ここに設計図を書き込むの、必要な場所に必要な資材をこっちの魔法陣と繋げて。例えば…あ、ソーサーを登録して、ここと繋げれば…」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
ああ、良かった。
このやり方ってないんだね。
それなら無駄じゃないか。
「本探したらあったって、これ読めば魔法陣の使い方と、守りの魔法陣を建物に組み込む事も出来るけど、この魔法陣には攻撃の付与は出来ない。攻撃の魔法陣は組み込めないという事は重要だから必ず覚えておいて、だって。はい」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「あ、何ヵ国必要なの?」
「………9ヵ国必要です」
「ありがとうございます」
みんな使えないと判断したディアブロが答えた。
じゃぁ、9枚か。
「こんな事でお礼しなくていい!とも言っていたよ」
「かしこまりました」
うん、呆然としてるリンジーに渡して、アレスに伝わらないように口止めもしておいて。うん。
「早く遊ぼうよ」
「うん」
君たちは興味ないよね。
『わたくしも欲しいのです!あの…本当に神様が?』
ああ、淫魔世界は神が王として君臨してるから建物なんかは力でぱぱっと作れるけど、光のは無理か。
魔法陣を勉強すれば出来そうだけど。
『私のだよ、お近付きの印に直接創りに行くよ』
『よろしいのですか!?』
『家具だって欲しいでしょう?』
「うお?」
飛びついてきた光のの胸が、おっぱいが!おっぱいが顔に当たって…!
いいご褒美ですううううう!
「ありがとうございます」
「うん、うお!?」
何故引っ張るんだ…淫魔よ…。
「この世界に家が欲しくなったんだけど?」
なにその態度。
「可愛いいいいいいい!」
「んふ♡ヤり」
「マージャンがしたくなりました!」
「ちえっ」
忘れてた…。
淫魔相手に軽々しく褒めてはいけないと…!
簡単に食われてしまう!食われないけど!
『淫魔と光のと、闇のに繋げておいたわ。淫魔はイヤーカフから話せると理解して。みんなで話せるのは今だけ』
これでいいでしょ。
『ヒナノー、みんな寂しがってる』
『そもそも初対面でしょ』
『見かけたことあるもん。それにー?黒目黒髪なんてヒナノしかいないじゃない』
それもそうか。
天使サマーの姿形を聞けば、知ってる者なら誰でも分かるか。
『やっぱり!知っていたのですね!卑怯ですわ!白々しいにも程があります!』
『あんたっていっつも惜しいのよ。馬鹿正直なんて名前に変えたら?』
『なんですって!?』
うん、そこで立ち上がるのはやめてくれ。
一応、淫魔が出してくれたマージャンを無言で打ってるように見せてるからね。
『あ、家なら光のたちの家を創ったあとにね』
『は?』
え?
『なんで私が先じゃないのよ!』
『言っているではありませんか!わたくしはいつだって特別ですの!』
いや、先に約束したのが光のだっただけで、うん、まぁ、なんでもいいよ。
「ツモ」
「「早いわ!」」
「うへ、うへへ、」
君たちが集中して遊んでないからでしょー?闇のは危険牌を5巡目前から出してないよー?
『闇のも好みがあったら教えてね』
『う、うん、え、えへ、』
『光のコレクションみたいな建物も創れるよー』
『!?対価を、対価を是非にお願い致します!』
凄いね、君。
結構負荷がかかるというか、喋るのも辿々しくなる程なのに…。気力ってやつ?
『えー?思い浮かばないなー。あ、淫魔、ホットチョコレートありがとう。あそこの本屋のが一番なのよ』
『知ってる、さっき開けてもらったから』
『わざわざ?よく出てきたわね、ありがとう』
『ヒナノが来ないーって、あげたら思い出してくれるかなー?なんて言ってた』
『そう……ごめんなさい』
『いいじゃん、好き勝手に遊ぼうよ』
『……そうね』
『対価を!』
うん、ちょっとしんみりしてたからね?黙れるか………な………。
『ああ、対価決めた』
『なんなりと』
『家を創り終え、モナハン王からの呼び出しがない限りは、光のがしたい事ではなく、闇ののしたい事だけを…20年?懐中時計をあげるから、20年して』
『なぜですの!?わたくし関係ありませんわ!』
『だからこその対価でしょう?精霊なら、対価に付き纏う“被害”を知っているはずだと思っていたけれど?』
『〜〜』
『か、かしこ、まり、まし、た』
その拙い言い方は肉体への負荷ではなく戸惑いだな。
どうにも光のは奔放…というか、己の立場の理解が甘い気がする。
私と出会った時もそうだったけれど、簡単に対価を渡し、対価を願う。
それは人間以外になら好ましいけれど、人間相手だと危ういと思った。
ナニかを願い、対価と交換する。という、人間にとっては奇跡にさえ見えてしまう所業は必ず巻き込まれる人や、土地、最悪国にまで蔓延る。
モナハン王に付きまとっている行動は、“悪”にはなっていないみたいだけれど、それはモナハン王の操縦が上手いだけだ。
他の人間を気に入り、国にまで侵食した結果がこの先、“悪”に寄る可能性の方が高い。
『影響力を知りなさい』
『そ、それは闇のへの対価とは…』
『いいえ、これが闇のへ求める“対価”です』
『は、はい』
『いつかあなた自身が招いた厄災を嘆く未来にならないよう、世界がマズくならないよう、私は闇のへ願います。いいですね?』
『『はい』』
『いい子たちね』
「ツモ」
「「あー!」」「ぅぅ…」
なにを考えているのかは分からないけれど、ずっとほっぺを真っ赤にしている闇の。
そんな闇のに気付いた光のまでほっぺを真っ赤にしている。
そして、二人が放つ興奮に当てられた淫魔は…。
「ヘディよ」
「友達になってください!」
「ふふ♡ヤ」
「モナハン王がこちらをじっと見ています!」
「ちえっ、またね」
「うん!」
淫魔改めて、ヘディはモナハン王へとすり寄り、自然とお開きになったマージャン会…ん?お茶会じゃなかったっけ?
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