第15話
その夜。
部屋の電気を消して、ベッドに横になる。
天井の輪郭が、ぼんやりと暗闇に溶けていく。
——付き合ってたのかな。
昼間の光景が、何度も浮かぶ。
さゆりに抱きしめられていた、たける。
「ごめんなぁ」と、泣いていた声。
——まだ、今も。
——たけるくんは、彼女のことを好きなのかな。
考えたくないのに、考えてしまう。
どうして、二人はペアを解散したんだろう。
どうして、競技を続けられなくなったんだろう。
噂話が、頭の中で形を変えて広がる。
——失恋。
——メンタル。
——競技人生。
胸の奥が、重たい。
目を閉じても、眠れない。
自分に言い聞かせる。
これは競技だ。
私は、パートナー。
……でも。
——私、思ってるより、彼のこと好きになってたのかもしれない。
その自覚が、いちばん苦しかった。
胸の奥が、じわじわと痛くなって、
気づけば、涙がこぼれていた。
音を立てないように、枕に顔をうずめる。
泣く資格なんて、ないはずなのに。
——このままじゃ、だめだ。
練習に、集中できない。
リンクに立ったとき、余計なことを考えてしまう。
それは、ペアとして致命的だ。
まなみは、ゆっくりと起き上がった。
暗い部屋で、スマホを手に取る。
——逃げない。
次の日。
私は、聞くことにした。
たけるくんに。
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