オリンピック目指す?

カフェを出る頃には、空が少し暗くなっていた。

 駅へ向かう道を並んで歩きながら、たけるは何度も言葉を選んでいるようだった。


 やがて、足を止める。


「先輩」


 その声に、あゆみも立ち止まった。


「一緒に、四年後のオリンピックを目指しましょう」


 一瞬、息を忘れた。


 四年後。

 簡単に口にできる数字じゃない。

 年齢も、体力も、現実も、全部知っている。


 それでも——

 たけるの目は、まっすぐだった。


 無謀だとか、遅すぎるとか。

 そういう言葉は、どこにもなかった。


 あゆみは、少しだけ笑った。


「……大きな目標だね」


「はい。でも、先輩となら」


 その一言が、胸に残る。


 即答はしなかった。

 まだ怖さも、不安もある。


 それでも、あゆみは思った。


 ——目指してみたい。


 世界の頂点なんて、想像もできない。

 それでも、はるか上を見上げることくらいは、許されてもいい。


 私たちは、まだ何者でもない。

 けれど、同じ目標を掲げて、歩き始めた。


 リンクの先にある未来へ向かって。

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