第5話 忘

「着いたでー。リョウ、どないした?真っ青な顔しとるぞ。初めてやでな、山火事なんて。ここで休んどったらええ。おじさんが運ぶでな。」

「ごめんな。おじさん、、。」

僕はそう答えるだけで精一杯だった。気持ち悪い、、。吐きそうだ。

車から思わず飛びだして、地面に吐いた。吐きながら目の前で燃え上がる炎を見た。

赤色が一気に僕の中に入ってきた気がした。


ぐるぐると過去が走馬灯のように浮かんできたんだ。

あの夜、俺、、、。

「あんたみたいな負け犬は一生、可哀想って言われながら金持ちの足元にひれ伏すのよ!

ばっかみたい!」

そうだ、あの子は最後にそう行って腕を組んで笑ったんだ。

俺は悔しくて思わずあの子を突き出した、、。あの子は俺が突き飛ばした勢いで後ろに倒れて頭を打った。動かなかったから、俺は怖くなって、、、逃げた。

それで布団で泣いていたんだ。

俺があの子を殺したんだ。忘れていた、いや、記憶を封印してたんだ。

俺、なんてことを、、。


「リョウ君!!大丈夫!お父さんから電話があったんよ。リョウ君がおかしいって。」

アズミ先生の声がした。俺は泣きながら先生に抱きついた。


「先生、僕、あの夜の事を思い出したんや。あの子を、、。」

「言わんでいい!もう、終わったことやに。誰もしらんことや。あんな事になると思ってなかったのやろ?」

「、、。負け犬言われて悔しくて軽く押したつもりやったや。」

「わかってる。わかってるから。とにかく今夜は帰ろな。早よ横になったほうがええが。」

僕はアズミ先生の車で夜の山道を帰ることになった。

ぼんやりした頭の中でふと疑問が湧いてきたんだ。

確かにあの子を押したのは俺。だけど、火事はどうして起こったんだろう?それにあの子はなんで内鍵のかかった寮の中で死んでたんだろう。

僕の忘れていることがまだある?そうなのか?

アズミ先生は全部を知っているのだろうか。聞いてみたいと思ったから運転席のアズミ先生を見た。

その顔は暗闇の中でも、はっきりと冷たい般若のような恐ろしいものだった。







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