第2話 火
おさげちゃんと別れたあと、布団の中で悔しくて涙が出た。眠れやしない。
「うん?なんか臭い、、。焦げ臭い??」
俺は布団から這い出して部屋から出て周りを見渡した。
寮の物置部屋から赤い炎が見えた。俺は驚いた、まさか、火事??
水を撒けば消せるんじゃないかとバケツを探して洗面所へ水を汲みに行って戻ると
もう、生活寮の中は真っ赤な化け物が渦巻いてるようだった。
化け物の向こうで皆んなが助けてと叫んで泣いているのがわかった。
その頃には集会所で集まっていた大人達も気がついたらしく大騒ぎして集まってきたんだ。
けれど、誰ひとりとして炎の向こうの子供を助けようとする者はいなかったんだ。
俺はガタガタ震えながら突っ立っていた。
「リョウ君!!あなた無事だったのね?良かった、、、。」
そう言って抱きしめて泣いてくれたのはアズミ先生だった。
「先生、俺、俺、、。バケツで水を汲みに行ったんだ、、。」
「うんうん。リョウ君のせいじゃない、、、。心配しなくていいから。リョウ君は
ここから離れようね。ここは危ないから。」
そう言うとアズミ先生は俺の手をきつく握りしめて、教会の地下室へ連れて行ったんだ。
「いい?先生が呼びにくるまでここで待てるわね?どこにも行ってはいけないわよ。」
「うん、、。」
いつもは穏やかなリョウコ先生の顔が暗がりに白く浮き上がって妙に恐ろしい気持ちになった。俺は色んな事がありすぎて、教会の地下に積んである段ボール箱に挟まれてどろりと眠りに堕ちた。
「リョウ君、起きて、起きてちょうだい。」
夢の中から俺を呼ぶ声がする、、、。だれなの?お母さん、、、。
目を開けるとアズミ先生がいた。
「遅くなってごめんね。お腹空いたでしょう?クリームパンとジャムパンと牛乳よ。
食べて。寒かったわね。こんなに体が冷たい、、。」
アズミ先生は自分のコートを抜いて着せてくれた。俺は急にお腹が空いて、パンに齧り付いたんだ。
俺はお腹空いてたから先生の持ってきてくれたパンにむしゃぶりついた。
アズミ先生と教会から出ると生活寮は無くなっていたんだ。
俺は身動きができなくて頭がぼーつとしていた。
「アズミ先生、リョウ君は助かったのね!!良かった、、、。ひとりでも助かった子がいて良かった、、。」
声をかけてきたのはシスターだった。
シスター?今なんて言ったの?ひとりだけ助かった?それって皆んな死んじゃったの?
俺は頭がぐるぐるして気持ち悪くなり吐いたんだ。
気がついた時は病院のベットに寝かされていた。
俺はあの夜のことを思い出そうとしたけど、気持ち悪くなって出来ない。
アズミ先生が俺の部屋に入ってきた。
「気がついたのね?良かった、怖かったものね。」
「先生、俺、あの夜の事を思い出そうとすると気持ち悪くなるよ。」
「そう、、、。いいのよ。思い出さなくて、そうその方がいいわ。リョウ君、実はね、お巡りさんがリョウ君に話を聞きたいって言ってるのよ。
気がついたら教えて欲しいってね。大丈夫かな?」
「先生、できるかな、、。でも、皆んなの為にも話さないといけないよね。」
「先生も一緒にいるから安心して。気持ち悪くなったらすぐに辞めてもらうからね。」
婦人警官さんと背広を着た男の人が入ってきたんだ。
「こんにちは、怖かったわね?お姉さんに火事のことを話してくれるかな?」
俺に話しかけてきたのは、婦人警官さんだった。背広の男の人は冷たい感じがして目つきが怖かった。
アズミ先生は僕の手を握ってくれていた。
「、、、。
俺、布団で寝てたんだ。そしたら臭いにおいがして。なんだろって部屋を出たら寮の奥が赤くなってたの。」
「そう。びっくりしたでしょう?寝てたのに良く匂いに気がついたわね?」
どうしよう、おさげちゃんと寮と大人の集まってる部屋の通路で話してたなんて言えない。困っている俺を見てアズミ先生は代わりに答えてくれた。
「リョウ君、おトイレに行こうって目が覚めたんだったよね?先生に話してくれたじゃない?」
俺はそんな事をアズミ先生に話してない、でも先生がギュと俺の手を握ったから、そう言うんだと思った。
「うん。おしっこしたくなって、、。」
「そうだったの。それで目が覚めたのね。わかったわ。寮の奥が燃えてるのを見た時どうしたのかしら?」
「びっくりして、水をかけなきゃって、、、。」
「先生や大人を呼びに行こうとは思わなかったの?」
「わかんない、、。水をかけなきゃってしか、、。」
「こう言う時にどうしたらいいか?って普段から先生に教えてもらってなかったのかな?」
俺は困った。小さな事で大人をわずらわせるなって言われたから。だから、何とかしなきゃって焦ったんだ。何だか気持ちが悪くなって冷や汗が出てきた。
「リョウ君、大丈夫?顔色が青いわ。すいませんがもう無理です。子供なんですよ。
大人だって炎を見たら冷静になれない人はいると思います。精一杯に考えたんだと思います。」
「ごめんね。君を責めてる訳じゃないの。最後にするからね。実はあの火事でね、君の友達以外の子が亡くなったの。クリスマス会に来てた女の子なの。君が火事に気がついた時にその子を見たりしなかった?三つ編みした女の子なのよ。」
え、、。あの子死んだの、、。どうして、なんで?俺はムカムカして吐いてしまった。
「リョウ君大丈夫!この子にとっても火事は思い出すのが辛いんです。もう、やめてください。」
「ごめんなさい。辛いことを話してもらったわね。でもお願いだから、女の子を見たかどうかだけ教えてもらえないかな?」
「俺、、、。知らない。」
「そう、知らないのね。ありがとう。体調が悪いのに協力してくれて助かったわ。」
婦人警官と背広の男の人はヒソヒソと話たあとアズミ先生に挨拶をして出て行った。
あの子死んだ?なんで?寮は内側からは開けられるけど外側から開けれないようになってる。俺はあの子と別れたあとちゃんと鍵をかけたはず。いや、絶対にかけた。
内鍵をかけることは厳しく言われたから。忘れるはずなんてないんだ。
アズミ先生はもう、忘れなさいと優しく頭を撫でてくれた。
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