ガラス細工の街

菜の花のおしたし

第1話 雪

クリスマスだってクラスの皆んなは大騒ぎしやがるけど、なーんもキリストなんかに関心ないだろって思いながら学校帰りの道を歩く。


俺は物心ついた時にはそう、施設ってところにいた。

どういう事があってそうなったのか?誰も教えてくれない、、。

と言うか怖くて聞けなかったと言った方がいいか。


やるよ、施設でクリスマス会。

俺のいた所はアーメンの所だったしな。

皆んな、お揃いの白いスモッグ着させられてさ、、、。ドリフのコントかよ。

寄付をしてくださるご親切な優しい敬虔なクリスチャン様が集まるのさ。

俺達はこの日の為に、讃美歌を練習する。

あんまりにも下手ぴーな奴は口パクにさせられるんだぜ。

チビ達は最前列。そらぁかわいい方チョロチョロした方が寄付したくなるからな。

俺は小学四年になってたから、だいたいの成り行きはわかってきてた。

歌い終われば拍手喝采、高そうな服やバッグ、指輪をつけたキンキラおばさん、毎年わざとらしくレースのハンカチ出して目頭をふきやがる。

ほら、見てろ、もう泣くぞ。あはは、どうしてこう毎年同じ事ができるんだ?

俺は意地悪くおばさんを見ていた。


そのあとは必ずキンキラおばさんの旦那さんがサンタクロースの服を着て登場ー。

赤い紙の長靴をひとりひとりに勿体つけて渡す。

「ありがとうございます。うわー、サンタさんの靴だ!」

「あ、お菓子が入ってるー!」

これは言わねーとならないんだな。

確かにお菓子は嬉しいさ。

チョコやら飴、マシュマロ、クッキーなんて滅多に食べられないからな。

チビ達が貰ってる時だ、きつい視線を感じたのは。誰だ?俺はお客さん達の席を見た。

あ、キンキラおばさんの後ろに男の人と女の人が座ってる。その横の三つ編みおさげの女の子だ。

そのおさげは瞬きもしないで俺を睨みつけるように見ていた。しまった、馬鹿らしいって顔してたからバレたか。やばい、、。


クリスマス会が終わるまで俺は元気を無くしていた。シスターのお説教はもうくどいし、

お尻を出して定規でぶたれるのも嫌だ。小さな頃みたいに痛みが辛いからじゃない。

もう、慣れたから。だけど、俺だって小学四年だ。シスターは婆さんでもお尻を見せるなんて恥ずかしい。

どうか、マリア様、この哀れな子羊をお救いくださいと願ってしまう始末だ。

俺達はその後は施設の部屋に戻る。お客さん達は施設が用意したご馳走とワインとかって言うのを飲むんだ。

そして、大抵ぶんたかたった、ふんちゃかちゃやっやと男の人と女の人が手を合わせて踊る。

俺達の出番はお終い。

「さあ、サンタさんが来るのはいい子のところだけよ。歯磨きして寝るのよー。」

施設の職員は、馬鹿らしい嘘をつく。貰ったお菓子の靴は回収されちまう。一気に食べちゃいけないらしい。

毎年、枕元にあるプレゼントなんて「欲しい」と願ったもが置いてあったことなんか一度もなかった。

チビ達は寄付された古い絵本とか手作りの歪なぬいぐるみ。

小学生になると緑色のトンボ鉛筆二本と消しゴムに決まってる。信者さんで文房具屋をやってるおっさんの寄付だろ。売れ残り見たいな。

俺だって小さな頃はおかしな願いをしたさ。「お母さんが迎えに来てくれますように。」なんて、、。

ここの生活が長くなるとそんな夢みたいなことは起こらないんだってわかるんだ。


そんなことより、俺は睨みつけてきた女の子が気になった。

こっそりとお客さんが集まってるところを覗きに行こうと思った。

裏庭に続く踊場を行くと突然、女の子が現れた。おれはびっくりして声をあげそうになるのを手で口を押さえて飲み込んだ。

「何してんの?」

「君こそこな暗がりで何をしてるんだい?」

「つまらないもの見せられたわ。馬鹿みたい!って思ってたのよ。そうそう、あんた、うちのお婆様の事をバカにした目で見てたわよ。私、気がついてたわ。ふふ。」

女の子は意地悪そうに笑ったから、俺はびびった。シスターにチクられたらお終いだ。

「あー言うのってさ、あんた達みたいな可哀想な子供達を私達は見捨ててません。そう、神の御心に従って。なんて嘘くさい事を平気で言うのよ。

ほんとは自分の虚栄心を満たしたいだけなのにね、周りから良い人だとかって思われたいだけよ。あとはね、ここに寄付するのって税金対策なんだって。パパが言ってたわ。」

俺は「虚栄心」とか「税金対策」なんて難しい言葉がすらすらと口から出てくるおさげちゃんをぽかーんと見つめてた。

「俺、良くわからないけどさ、俺達みたいなもんに親切にしてくれるんだから感謝しなきゃってシスターはいつも言ってるよ。」

「あんたってバカね。あんないけすかない大人の見せ物になってどうするのよ。」

「君とは違うから。俺は中学を卒業したらここを出て、住み込みで働くしかないんだぜ。

見せ物だって仕方ないんだ。そう言う風に産まれたんだから、、。」

「ふーん。さっきの舞台でのあんたの目は大人の汚いのを見抜いてるって思ったけど。

負け犬根性なだけだったんだ。」

「負け犬根性って言うな!じゃあお前が俺だったらどうする?」

「そうきたわね。私なら高校も大学も行ってやるわ。お金がないなら知恵をつけるしか無いと思うもの。」

「俺達は君みたいに家庭教師や塾に行けるわけじゃ無い。それに、学校から帰れば俺よりチビの面倒も見なきゃなんないんだ。勉強してる時間なんてないよ。」

「あんた、言い訳ばかりね。寝る時間を削ればいいじゃない!あんた達みたいな子は普通の子と同じことしてちゃダメなのよ。覚悟がないのね、、、。」


おさげ髪の女の子はため息をついた。それがやけに胸に突き刺さったのを覚えている。

そうさ、努力したって無駄だって諦めてるのを見抜かれたから。

なんで、こんな奴にここまで言われなきゃなんないんだって、、。
















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