第14話
武器の調整を終えてソファに座っていた透は、床がかすかに振動したような気配を感じて目を開けた。脳にかかる負担を出来る限り少なくしようと目を瞑っていたため、それが明瞭に感じ取れた。
すぐに立ち上がり、入り口へ。
ドアをわずかに開け、隙間から外を窺った後、肩で突き飛ばすようにして廊下へ出る。武器を持った両手を素早く左右に向け、何もいない事を確かめてから、利き腕の武器にコントロールを絞った。
「利玖さん」
武器を構えたまま、廊下を進む。庭を調べる時に使った階段がある方だ。その階段は、廊下の突き当たりにある四号室──スイート・ルームの客が使用する事を想定して作られたもので、利玖には存在すら教えていない。たとえ下りたとしても、庭に通じるドアはもう施錠されているし、レストランに行くには遠回りだ。利玖には使う理由がない。
しかし、彼女が自分の足で一号室の前を横切っていったなら、絶対に気づいたはずだ。
透は三号室の前で立ち止まる。
ドアのそばに利玖がいる可能性を考えて、一旦武器を下ろす。片手でそれを握ったまま、もう一方の手でドアをノックした。
軽く、三度。
返ってくる音はない。
それを確かめると、透はすぐに姿勢を変え、ありったけの力でドアを叩いた。
この部屋の間取りも、ベッドの位置も、そこから外の音がどんな風に聞こえるかも熟知している。たとえ耳栓をして眠っていても、これだけの音を立てれば、無反応ではいられない。
ふと、違和感を覚え、透はノックをやめた。ドアノブを握り、そっと回してみる。
鍵がかかっていなかった。
ドアを開け、中に飛び込む。位置を見ずにつまみを一気にひねってシャンデリアを点けた。
誰もいないベッドの傍らに、室内履きがきちんと揃えた状態で置かれているのを見て、透は舌打ちをして踵を返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます