第2話 雨と静寂
〈A視点〉
手先は冷え切って、声もほぼ出なくなってきた。やっとそれに気づき、ギターを置く。ベランダの窓を閉めて、ベッドに横になる。
「結局、何にもならなかったな」
呟いた声は、静寂に飲まれて消えた。その日、外の誰かに気づくことは無かった。そのまま眠りにつく。
〈B視点〉
しばらくして、演奏が止まった。ホッとしたような、なんだか寂しいような、なんとも言えない気持ちのまま、ハッと正気に戻る。傘を拾って、帰路につく。誰だろう。雨の町を歩きながら、想いを馳せる。
「小説のネタになりそうだな」
スマホにメモを残し、再び歩き出す。いつか会えたらいいなあとか、どんな曲だったのだろうとか、あの演奏が頭から離れない。スランプに陥っていると感じているからこそ、久しぶりに大きな刺激をもらえた。だからといって、原稿を進められるかと言われたらそうでは無いのだけれど。
自宅である、マンションの前に着き、鍵を開けて部屋に入る。コンビニで購入したカフェラテを開けて、もう一度、机のパソコンに向かう。スマホのメモを見ながら、やはりあの演奏に想いを馳せる。
「はぁ、もう一度、聞けたらなあ…。ま、そればっかり考えてても仕方がないしね」
画面の端に出てきた、担当さんからのメールに溜息を一つ。適当に返信だけして、今度こそと、作業に集中しようとする。
まだまだ、雨は止みそうに無い。
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