第3話 禁固不死刑とは

なぜ「禁固不死刑」が生まれたのか。


この刑罰が適用されるほどの犯罪とは、人類の歴史上類を見ない、極めて凶悪なもの。大量虐殺、世界規模のテロ、人類の生存を脅かす重大犯罪などである。

不死の技術が生まれたことで、人々は「永遠の命」を手にすることが可能となり、「永遠の幸せ」を望むようになった。その希望である「永遠」を「祝福」ではなく「罰」として利用することで、犯罪の重大さを社会全体に強く意識させることが出来るようになった。

従来の極刑は、被害者や社会にとって「一瞬で終わってしまい、それ以上何も出来ない」と見なされるようになり、真の報復は、加害者に対して「被害者が感じた苦しみと同じ時間の長さ」の苦痛を与えること、すなわち「永遠」だと考えられたのだ。


「不死身処置」が可能になった社会では、その技術自体が悪用される脅威に直面している。この刑罰は、その技術を逆手にとった、強力な抑止力として機能することになる。

ユキトは、刑務所の壁の中に閉じ込められた、人類の失敗と正義の勝利の「生きたモニュメント」となる。彼を時折メディアで取り上げ、彼の永遠の苦痛を見せることで、将来の犯罪者に対する最強の牽制となった。


人類が「不死の技術」を手に入れた社会では、死はもはや避けられないものではなく、「選べる終焉」となる。その社会が、極悪人に与えた究極の罰は、彼から苦痛からの解放となる「終焉を選ぶ権利」を永久に剥奪し、永遠の苦痛の中に閉じ込めることだった。

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