心無い男

朝6時ちょい過ぎ、俺のクルマは国道を走る。ぁ、やっぱり県道だった。

地方の県道、高速はカネかかるからな。ありふれた通勤さ。

そろそろ、いつもの自販機のところに着く。

俺はいつも、ここで缶コーヒーを買う

ダイドーの自販機だ。

ｰｰｰｰ　チャリン

ガコン…いつもの缶コーヒーが出てくる。

自販機「いってらっしゃい」

四角い鉄の箱に「行ってきます」を言うほど俺はおしゃべりじゃねーけど、これ、なんかよ…聞きたいんだよな。

ｰｰｰｰ　自販機だけが、俺を労う。

また運転だ。

労う…俺は　若いうちの苦労は買ってでもしろ。っーのが嫌いなんだ。

苦労の労はよ、労（ねぎら）う、労（いたわ）る、だろ？

給料が少ないのは苦労じゃねぇんだよ。

クルマは走る

コンビニが見えてくる。駐車場には、沢山のクルマ。

ｰｰｰｰ　通り過ぎる。

俺はよ、コンビニが嫌いなんだよ。嫌いっつーか、苦手、疲れちまう。

だってよ、店員がいるだろ。深夜のいつも客いないコンビニとかで、いつも同じおっさんがレジとかよ、

思っちまう。

ありゃ多分オーナーだな…深夜バイト雇えるほど売上無いからオーナーが毎日徹夜なんだな…とかよ、思っちまう。

余計なお世話だろ。

反対に、若い店員だとよ、なんつーか、腹立つんだよ。

女の子のいる職場、夢持ってる頼れる先輩とかよ。

だからよ、レジに並ぶ時だけでもよ、そんなもん、

見てらんねーんだよ俺は。

つい、つい毎日何度もコンビニ寄っちまうよーな奴ら、平気なのか？

若さに夢、女の子、見せつけられて、気疲れしねーのか？

それが俺には眩しくてよ、下向くか痩せ我慢して前向くかしかねぇ。

いつになったらよ、ロボットから物買えるよーになるんだ？

クルマは走る

ガソリン　E［■■□□□］F

そろそろか

ぁー、セルフはダリーんだよなー。雨の日とか特に。

かといってよー、フルサービスは疲れちまう。

ｰｰｰｰ　俺は座ってるだけなのによ。

何に疲れるか？そりゃ…

店員、俺より視線低くすんなよ。わざわざしゃがみ込むなよ。

無駄な動作だろ？

お前それ1日百回すんのか？1日百回、いや、来た時と出る時の2回だから倍かよ。

俺はガソリンを買いに来た。

だけだ。

そんなもん、無言でカードだけ受け取ってくれよ。

無愛想でいてくれ。給油終わるまでくらい、そっとしておいてくれ。

俺なんざに、膝ついて何か言うなんざ、無駄。

無駄なことすんな。それなら俺も、人間に無駄なことさせてるっつー罪悪感も無ぇし、気楽だ。

ガソリン入れば文句無ぇ。

そんな気ぃ使うくれーなら、

俺ならセルフでガソリン入れてた方が、ラクだ。　ｰｰｰｰ

何も俺はよ、人間嫌いでもねーし、偏屈でもねーんだよ。

けどな、なんつーか、炉端の石でいたい。匿名な。

ｰｰｰｰ　そんな気楽さ

俺の行くセルフ、清算は人のいるレジなんだけどよ、俺の名前呼ぶんじゃねぇ。

「◯◯様、レギュラー32リットルです！」

お客様　でいい。

匿名でいさせてくれ。でないと、疲れちまう。

頼むぜ。