第10話 破壊の論理
両者の凄まじい一撃は、世界の風景を一変させた。大地は裂け、山は砕け、湖は消えた。その爆心地で、光の覇王アリスと、闇の騎士は、一瞬の静寂の中で対峙していた。
アリスの全身から立ち上る黄金のオーラは、怒りと疲労によって激しく揺らめいている。闇の騎士の黒曜石の甲冑にも、光の剣技によるわずかなヒビが入っていた。
闇の騎士は、自身の破壊した地形を見渡し、その声にわずかな笑みを混ぜて語りかけた。
「素晴らしい力だ、光の覇王よ。見よ。お前も私も、この世界を等しく破壊している」
彼は、その漆黒の剣『終焉の刃』をゆっくりとアリスに向けた。
「お前は、我々が世界を救う救世主であると信じているか? 違う。お前も私も、世界の秩序を維持するために生まれた、ただの破壊者だ」
アリスは息を荒げながら、剣を構え直した。
「違う!私は、お前がもたらす闇を止めるために…」
「止めると? 笑わせるな」闇の騎士はアリスの言葉を鼻で笑い飛ばした。「お前の光がなければ、私の闇は現れない。そして、私が世界を滅ぼそうとしなければ、お前の光も解放されることはなかった」
闇の騎士は、声を一段と低く、しかし、世界の真実を告げるかのように、重々しく響かせた。
「わかるか?光の覇王よ。この大破壊が新しい世界を産むためということを」
彼の言葉は、アリスの心臓を直接貫いた。
「この世界は古びすぎた。生命は停滞し、文明は硬直した。人々は伝承に怯え、自らの手で希望を殺そうとした。光も闇も、共に恐れられ、排斥された。古い世界は、自ら終わりを選ぶことができなかったのだ」
闇の騎士は、一歩前に出た。
「ゆえに、我々が呼ばれた。我々は、この古く、腐りかけた世界を、完全に破壊し尽くすために存在する。光は古い世界の残滓を焼き尽くし、闇は世界を無に還す。その後に残る空白にのみ、真に新しい命が芽吹くのだ」
アリスは衝撃に言葉を失った。彼が命を賭して戦っていた相手は、単なる悪の化身ではなく、世界の変革を担う「破壊」という名の運命そのものだったのだ。
「我々は、伝承の通り、世界の終焉と始まりを告げる両極だ。さあ、覇王よ。お前の光の全てを私にぶつけろ。お前と私が、共に世界を滅ぼし、新しい世界を誕生させようではないか!」
闇の騎士の瞳が、漆黒の炎のように燃え上がった。彼の言葉は、アリスの持つ「世界を救う」という信念を根底から揺さぶり、彼自身の存在意義を問い直すものだった。
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