第3話 負け犬の遠吠え
「じゃあ、また」
そう言って、いつも通り春香をタクシーに乗せた。
手を振ることもなく、淳彦は駅へ向かう。
歩きながらスマホを取り出し、春香のLINEを開く。
迷いなく、ブロック。
(用済み。完了)
罪悪感は、なかった。
使い終わった。それだけの話だ。
「ピコン」
LINEの通知音が鳴る。
佳恵(かえ)29歳。
『今週末、会える?』
デートの誘い。
だが、昼間に会うのはコスパが悪い。
『夕方からなら空いてるよ』
それだけ返す。
『わかった!じゃあ、いつものところで!』
画面を見て、思わず口元が緩んだ。
女は簡単だ。
いつでも、思い通り。
やっぱり俺は強者だ。
自尊心だけが、どんどん膨らんでいく。
「比村くん、この案件なんだけど……少し難しいけど、任せてもいいかな?」
上司が声をかけてきた。
「あー……はい。大丈夫です。やってみます」
一瞬だけ考える素振りを見せる。
「助かるよ。比村くんみたいな優秀な人がいて」
肩をポン、と叩かれる。
(当たり前だろ。
俺を誰だと思ってる)
淳彦の中で、確信が増幅していく。
仕事も、女も、人生も。
すべては自分の掌の上だと。
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