第3話 解禁と復讐

 放課後の学校。 場所は体育館。 


 既に人払いは済ませている。 いるのは、俺と校長と女生徒だけ。 


 女子生徒と部活動設立を賭けたタイマン勝負。


「立会人は校長先生……と。無茶をやらすぜ。この学校」


 さて、女子生徒の顔をまじまじと見ると、知ってる子だった。


 確か名前は─── ミミア・ロゼッタ。


 優秀な生徒だ。優等生と言っても良い。


 なんせ、俺の授業を真面目に聞いてくれているほどだ。 


 しかし、俺の事を嫌っているのだろう。 俺を見てくる視線は、セイラを思い出させる。


 獲物を狙う猛禽類の視線───  セイラは、ともかくミミアに嫌われる理由はないと思うのだが…… 


「それでは、先生。よろしくお願いします」


 彼女は、何が楽しいのかニコニコと笑顔を見せながら、杖を俺に向ける。 


 ここ聖ステラ学園は、魔法を教える学校だ。決闘方式は自然と魔法勝負になる。 しかし……


「あの先生? 杖を構えないのですか?」


「ん? 杖は3年前に無くして、それから新調してないのさ」


「それで、どうやって決闘をするつもりなのですか?」


 彼女の言うことは、もっともだ。

 魔法使い同士の決闘で杖を使わないという事は、騎士が決闘で剣を持たないと同じようなもの。


 けど─―─


「けど、心配はいらないよ。俺は体に術式が刻まれているから」


「───っ!」とミミアは警戒したような顔になる。


 術式が刻まれている。 その言葉だけで意味がわかるっては、勉強している証拠だ。


「それでは初めてもらうよ」と校長先生。


 それだけ言うと校長は魔力を放出した。 それは結界魔法だ。


 体育館が壊れないように、彼の魔力で空間が閉じられた。


 彼も『聖ステラ学園』で校長という立場だ。 このくらいの魔法は使えて当然だろう。


 結界が周囲を包み込む。それが戦いの合図となる。


鳥さん、お願いザ・バード


 ミミア・ロゼッタは杖を振りながら、短い呪文を唱える。


 彼女の魔力は、2匹の鳥に変えて飛び立った。


「78点」 


 俺は彼女の魔法に高めの点数を付けた。


 それから───


「───なっ! 私の魔法を素手で掴んで!」


「魔法を吸い寄せる魔法。手の表面に薄い魔力を流して、それを使った。一応、素手じゃないさ」

              

 説明を終えると、彼女の魔法をかき消した。 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        「だったら、これはどうですか?」と彼女は再び杖を振る。 


 「犬さん、お願いザ・ハウンド


 「35点」


 「工夫が足りないなぁ」と同じ方法で彼女の魔法を消す。


「魔法使いは、攻撃魔法の威力を高める事を好む。だが、君は動物の特徴を再現させている。なぜだね?」


「それは───」


「鳥なら上空を旋回させ、犬なら待機させ、君の命令で攻撃を開始させる。 このタイマン勝負を強制的に5対1にすることもできた」


 おそらく、それが彼女の完成型。高火力の魔法を放出するのではなく、動物に変化。


 そして、彼女の意思、あるいは半自動的に攻撃に参加させる。

 東洋型魔法使いの式神に近い使い方が正しいのだろう。


「加えて、動物の形をしているのは、君が動物好きだからかな? 

 魔力を維持させ続けるには、想像力イメージの維持が必要不可欠だからね」


 「お見事です。流石です、フレイ先生」


「ん?」と彼女の言葉に引っ掛かりを覚えた。


 普通は『流石です』って言葉は、高く評価している人間をさらに褒める時に使う言葉だ。


 普段、学校で昼行灯を演じてる俺に生徒たちは「流石」なんて言葉は使わないはず……  いや、言葉の綾ってやつか?


「フレイ先生の言う通りです。私の魔法は持続性が低いのです───言うならば、魔力のスタミナ不足。だから、すぐに消えてしまう…… でも、これならどうです」


 彼女───ミミア・ロゼッタは杖に魔力を集中させる。


「おいおい、魔力を使い果たすつもりか? 一体、」


 一体、何の動物を再現させようと───


お願いします、ドラゴンさまロード・オブ・ザ。ドラゴン!」

  

 杖は、それに耐えきれなかったようだ。


 亀裂が走り、砕け落ちる。魔力の全てを使った彼女は、気を失い、床に倒れる。


 その代償に、疑似的なドラゴンを生み出す事に成功した。


「校長先生、彼女を結界の外に―――」


 いや、校長先生は影が薄いが行動が早い。


 戦闘で存在を忘れていたが、校長先生は既に逃げ出そうとしていた。


 もちろん、生徒であるミミアを抱き抱えている。


「ご武運を」なんて気取る余裕まであるみたいだ。 やかましいわ!


「これはもう……部活の申請が目的で使う魔法じゃないだろ」


 こんな大技、ずいぶんと気軽に使ってくれる。 嬉しくなっちまうぜ。


 俺は義手に刻まれた術式に魔力を流す。


『疑似神経に魔力の注入を確認 疑似魔法術式に接続コネクト』 


「承認する」


『続けて、人工魔眼に魔力の注入を確認 疑似魔方術室に接続コネクト


「承認する」


『最終確認 隠し設定シークレットモード 極炎の魔術師 開始しますか?』


信号シグナル……レッド 獄炎の魔術師――――発動しろ」


 金属であるはずの義手。 硝子であるはずの義眼。


 その2つに、失われたはずの魔力が宿っていく。


「これは秘密だが、5分間だけ―――俺は全盛期に戻れる」


 生まれたばかりの疑似ドラゴン君には悪いけど、久々の本気だ。 手加減は期待するなよ!


 俺の魔眼で捉えたドラゴンの魔力。  現存できるのは3分にも満たない。


「このまま逃げ続けても勝てるが……それじゃつまらないよな? お前は本物じゃないが、俺の目と腕を奪った復讐リベンジをさせてもらうぜ」 

 

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