第8章 異変との接触
影が、木漏れ日の間で揺れる。
少女は息を整え、足を止める。
目の前に、あの形がはっきりと現れた。
輪郭はまだはっきりとは言えない。
でも、確かに触れられそうな距離にある。
少女は手を伸ばす。
刃ではなく、素手で。
指先が、わずかに空気を掴む。
冷たく、湿った感触。
形は固いのか柔らかいのか、はっきりしない。
それでも、そこにあることだけは確かだった。
指先に伝わる感覚は、森の空気と違った。
微かに振動があり、皮膚に静かに響く。
少女はそれ以上押さず、そっと手を引いた。
でも、心はざわつき、体が少し硬直した。
形は微かに揺れ、森の影に溶けていく。
少女は目で追いながら、呼吸を整える。
森の奥の空気は重く、湿り気と静けさに包まれている。
しかし、その重さの中に、微かに違うリズムがあることを少女は知った。
触れたことで、森の奥にあるものの存在が、より確かなものになった。
少女の足は止まらず、歩みを進める。
でも、先ほどの感触は、手だけではなく、心にも微かに残っている。
森の奥に潜むものは、確かに“そこにある”と。
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