ほっといちごみるくらて
花咲 千代
恋の話は嵐と同義
「ねぇ、駅前にめっちゃお洒落なカフェできたの、知ってる?」
「知ってる!一緒に行かない?」
「行こ行こ!」
昼休みの、ありきたりな会話。
どこの高校の、どこの教室にもいる、眩しい女子の軍団。
その中心でスマホを片手に話すのは、私の幼馴染だ。
藤屋花奈。名前からして華やかな彼女は、本当に顔も心も華やか。
私なんか、足元にも及ばないくらい。
「ねぇ、ちょっと!聞いてんの?くるみ!」
「——へ?」
ぼんやりとネガティブ思考の海に沈んでいって、モソモソと購買のサンドイッチを食べ終える頃には休み時間が終わっている。
これが、入学から半年経った私の日常。
けれど、今日はなぜだか沈んでいく私を釣り上げた誰かがいるらしい。
「カフェ、一緒に行こうってば!くるみ!」
「私ぃ?」
花奈が、机に身を乗り出して私に呼びかける。
「あんたじゃなかったら誰よ?私がくるみって呼ぶのは、桜草くるみしかいないでしょ?」
文句あんの?と花奈が眉を上げる。
文句なんてない。
ちょっと強気で気遣い上手なところが花奈のいいところで、教室の隅っこでコソコソしてる私にはない要素だ。
そんなこんなで、花奈の「ボッチを誘ってあげる」という温情にありがたく乗っかることにする。
そうと決まれば、あれよあれよと予定が組まれ、目を回しているうちに昼休みは終わってしまった。
もちろん、サンドイッチは半分しか減らなかった。
***
「私、カフェ・オレ・アートで!」
「私も〜」
「私、キャラメルソース追加で。甘くしてください」
放課後。
制服のままやってきた駅前のカフェ「テディベア」
くまのぬいぐるみをコンセプトにデザインされた内装は、ふわふわのもふもふで、もちろん、看板メニューのラテアートもくま。
メニューのカードを片手に注文を終えれば、柔らかいソファに座って雑談の時間だ。
正直、カフェで女子会なんてのは、ダイパや効率とは対極にある気がする。
「てか、あのメニューの写真、くるみのお姉ちゃんが撮ったの?」
「違う、従姉妹。まぁ、お姉ちゃんみたいな感じだけどさ」
陽キャ軍団は流石の話し上手。
私が引っ込み思案を発揮しても、負担にならない程度にグイグイ引っ張って、話題を振ってくれる。
この話題も、私がたまたま割引券を持っていたところから、五分は続いている。
なんだか、今みたいに陽キャと陰キャの隔たりがなかった頃に花奈と喋っているみたいだ。
「従姉妹のお姉ちゃんが写真の仕事やってて。なんか、割引券もらった」
「じゃあ、割引分くるみちゃんのお姉さんに奢ってもらうとして——」
従姉妹だってば、なんていう私のツッコミは気にもされず、花奈たちは話を続ける。
なんだか、胸がざわりとした。
嫌な予感。いきなり空に影が差して、目の前に雨粒が落ちてきたような。
そんな時は大抵、空を見上げた時には土砂降りなんだ。
「恋バナしよ!」
ああ、やっぱり。
目の前の花奈たちはニッコリ、私だけが、顔を強張らせた。
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